多文化共生 「隠れた争点」にも着目を

 与野党がそろって衆院選公約に盛り込んでいるものの、中身は対立する。そんな「隠れた争点」とも言えるテーマがある。

 多文化共生-外国人を仲間として国内に受け入れ、人権を守っていく。この取り組みをどう進めるか。新型コロナ対策に伴う入国制限が緩和に向かう中、私たち国民も改めて、この問いに向き合う必要がある。

 日本で働く外国人は170万人余に上り、農業、建設業、飲食業をはじめ幅広い分野で活躍している。人口減や労働力不足に悩む地域経済の担い手としても、もはや欠かせない存在だ。

 他方、技能実習生らが安価な労働力と見なされ、不当な処遇を受けている実態は看過できない。出入国在留管理庁が外国人の在留に関する権限を独占し、手続きに不透明な点が多いこともかねて問題視されてきた。

 与党の自民、公明両党は公約で、行政の多言語対応や相談窓口の拡充など「外国人の受け入れ環境整備」を主軸に据え、大枠では現行制度を維持する姿勢を示している。一方、野党の立憲民主、共産、社民の各党とれいわ新選組は支援に加え、入管行政の抜本改革や技能実習制度の廃止といった外国人政策全体の転換を訴えている。

 入管行政を巡っては、3月に名古屋の施設でスリランカ人女性が適切な医療を受けられず死亡する悲劇が起き、人権軽視の現実があぶりだされた。9月には外国人が裁判を受ける権利を侵害したとして東京入管の国外退去手続きを違憲とする高裁判決が下され、確定している。

 政府はこれらを受け、入管職員の人権意識の徹底や医療措置の改善を図る姿勢を示してはいる。それだけで十分な入管行政の適正化が図れるだろうか。

 多文化共生の理念は2018年、当時の安倍晋三政権が外国人材の受け入れ拡大に踏み切ったことに伴い、政治的な命題とされてきた。ところが受け入れは思うように進まず、コロナ禍に直面した在留外国人のサポートも含め、施策がなお追い付いていないとの指摘は多い。

 野党が提起し、国際社会からも強く求められている難民認定の拡大や、永住・定住者への地方参政権付与といった長年積み残されてきた課題もある。

 衆院選で各党は「日本経済の再生」を主要争点に位置付け、その道筋を論じ合っている。そこでは、多様な外国人材を積極活用するとともに、彼らの人権を保障する施策が欠かせないはずだ。政治がコロナ対策で内向きになり、大事な視点を見失ってはいないか。各党の公約にいま一度、目を凝らしたい。

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