「功労者はあなただ」幹事長辞意の甘利氏に翻意促した麻生氏

 試練―岸田政権始動㊦

 1日午後、自民党本部。約2時間に及んだ岸田文雄首相(党総裁)の慰留交渉は、実を結ばなかった。固かった甘利明幹事長の辞意。未明に小選挙区での敗北が確実になった後、安倍晋三元首相を加えた3人で「3A」の異名を持つ麻生太郎党副総裁も再三にわたり「こんなことで辞めてどうすんだ。今回の選挙の功労者はあなただ」。甘利氏を鼓舞したものの、翻意させられなかった。

 公示前勢力から微減とはいえ、衆院選で国会運営を完全支配できる絶対安定多数(261)を単独確保した自民。甘利氏に対し、党内からは「実質的に勝ったと言えるのだから、続投すればいい」「選挙指揮を執る立場でありながら比例復活に甘んじた『けじめ』として辞任が当然だ」と両論が出ていた。一方で、自身の現金授受問題が尾を引き、選挙戦にも少なからず負の影響を与えた。「辞任は、野党にとって追及材料が一つなくなることを意味し、メリットの方が大きい」(政府関係者)との見方も聞かれる。

 首相が重きを置く経済安全保障分野など政策面をリードしつつ、「3A」の結束を背に党内融和の「要」としてにらみを利かせ、党人事の際には首相に代わり登用を告げる電話をかけていた甘利氏。吉と出るか、凶と出るか、その離脱が実質的に始動したばかりの岸田政権を揺さぶったのは間違いない。

 「話を頂いたばかりでこれから考えるが、ワンチームとしていろんな問題に取り組む」。首相から後任の党ナンバー2を打診され、受諾した茂木敏充外相は1日夕、報道陣に戸惑い気味に語った。

「組合員の票が行き場失った」連合会長が共産との共闘に警告

 衆院選の結果責任の混乱に陥っているのは、野党第1党の立憲民主党も同じだ。投開票前は躍進との一部予測もあったが、ふたを開けてみれば公示前から14議席も減少。党内からは「こんな大敗で続けられるわけがない」(中堅)と、党執行部を突き上げる声が噴出している。

 1日、福山哲郎幹事長はカメラの前で深々と頭を下げ「私自身は腹を決めている」と引責辞任を示唆。枝野幸男代表も「僅差の選挙区で競り勝てず、結果的に議席を減らした。残念で申し訳ない」と表情をこわばらせた。来夏の参院選へ向け、自身の進退を含む今後の党方針を2日の執行役員会で示すというが、合意に達するかは見通せない。

 「共産党との関係(共闘)で現場は混乱した。しっかりした総括が必要だ」

 この日、立民最大の支持母体・連合の芳野友子会長は、衆院選の報告に訪れた枝野、福山両氏にきつくくぎを刺した。連合は当初から、立民と共産の接近に違和感を表明してきた。午後の記者会見で、芳野氏は衆院選を「連合が戦いづらかったのは事実。共産や市民連合との共闘で、現場の組合員の票が行き場を失った」と振り返り、参院選では同様の選挙協力は容認できないと警告した。連合幹部の憤りは止まらない。「どれだけの労組票が離れたと思っているのか。政権批判の受け皿になれていないのを、立民は気付いていない」

 これに対し、共産の志位和夫委員長は「野党共闘は大きな歴史的意義があった。参院選は揺るぎなく共闘を発展させたい。この道しかこの国は変えられない」と主張し、今後、立民にさらなる「進化」を求める構え。3議席増やした国民民主党の玉木雄一郎代表は「改革中道の路線をぶれずに貫く」とし、共産との協力を否定する。

 誰の目にも確かな成果を導くことがあたわなかった野党共闘。非自民勢力を結集しようとの試みは、早くも曲がり角に立ったように映る。

 (大坪拓也、郷達也)

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