世界津波の日 巨大地震への備え着実に

 大津波を伴う南海トラフ巨大地震は遠い将来に起きる災厄では決してない。迅速かつ着実に防災・減災の対策を進めたい。

 きょう11月5日は「世界津波の日」である。2015年に国連総会で採択された。

 幕末の1854年のこの日(旧暦)に起きた安政南海地震の際、庄屋が村人たちを高台に避難させ、津波から守った史実に基づく。現地の和歌山県広川町には記念館もある。

 今年3月11日は東日本大震災から10年の節目となり、各地でさまざまな鎮魂の行事が実施された。これを一過性のものに終わらせず、震災の教訓を生かせるよう改めて肝に銘じたい。

 本格始動した岸田文雄政権には、災害対策にも万全を期してほしい。岸田首相は就任からわずか3日後、首都圏を襲った強い地震に直面した。災害対策の最高指揮官としての緊張と重責を実感できたはずだ。

 この地震は津波の発生こそ免れたものの、東京23区内で最大震度5強以上を記録したのは東日本大震災以来だ。列車が脱線したほか、JRは主要路線で運転を見合わせ、多くの帰宅困難者が出た。停電や水道管の破損も相次ぎ、都市インフラのもろさをまたも見せつけた。

 南海トラフ巨大地震がもたらす大津波は、関東から九州にかけての太平洋側の広い地域に及ぶと予測されている。

 死者は最大で32万人超と推計される。桁違いの大災害と認識すべきだ。津波の高さは九州では大分県佐伯市や宮崎県串間市で15メートル前後と想定される。今後30年以内の地震発生確率は70~80%と極めて高い。

 津波想定地域では高台や避難タワーの整備が進む。病院や保育所が内陸に移転したり、集団移転を検討したりする地域もある。東日本大震災の被災地は今なお巨大な防潮堤建設が続く。ハード面の対策は地権者との関係などで想像以上の時間を要する。自治体の負担を軽減する国の適切な予算措置も必要だ。

 ソフト面では地域防災計画の不断の点検が欠かせない。「3・11」の際、宮城県石巻市立大川小では、裏山に逃げる判断がされず、80人余の児童、教職員が津波の犠牲になった。裏山は敷地内にあると言えるほど近接し、日頃から授業で登っていた場所なのに残念極まりない。

 大川小は市の浸水想定区域になっていなかったばかりか、災害時の避難場所に指定されていた。近くを北上川が流れるが、河口まで約4キロ離れており、大津波がさかのぼってくるとは想像できなかったのだろう。

 「想定外」と叫びたくなる自然災害が頻発している。危機は常に近くにあると考えたい。

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