乏しい政治経験、政権との距離感…保革対決ともに弱み 韓国大統領選

 来年3月の韓国大統領選は保守系最大野党「国民の力」が5日、公認候補に尹錫悦(ユン・ソクヨル)前検事総長を選出し、文在寅(ムンジェイン)政権を支える革新系与党「共に民主党」が擁立を決めた李在明(イ・ジェミョン)前京畿道知事との保革対決が軸の選挙戦になる。尹氏には、経済格差の拡大を招いた文政権への国民の不満という追い風が吹くが、予備選では懸念されていた政治経験の乏しさを露呈。一方、持ち前の発信力で論戦を有利に進めたい李氏は、選挙で有権者の批判対象になる政権与党との距離の取り方に腐心する場面も増えそうだ。

 「必ず政権交代を成し遂げる。(保革の)分裂と怒りの政治、腐敗と略奪の政治を終わらせる」。尹氏は5日、候補選出後の演説でこう強調した。尹氏の発言は、文政権の保守陣営に対する攻撃的な姿勢や、自身が検事総長として捜査を指揮した〓国(チョグク)元法相の娘の不正入学事件、李氏の城南市長時代の都市開発事業を巡る側近の疑惑などを意識した内容だ。

 同日発表された世論調査では、国民の力の支持率は文政権下で最高の38%を記録し、共に民主党は30%。次期大統領選についても57%が政権交代を望み、革新系政権の継続を求める回答は33%にとどまった。

 ただし、これらの数字は、尹氏への期待感と必ずしも直結しない。与党の公認候補に李氏を決定した10月中旬以降、野党の予備選に国民の関心が移行。尹氏と公認の座を争った洪準杓(ホンジュンピョ)元自由韓国党(国民の力の前身)代表の歯切れのいい発言が、20~30代の支持を集めた影響も大きかったとの見方がある。

 尹氏が予備選で苦戦を強いられたのは、政治経験の乏しい自身の言動が国民感情を逆なでしたことも響いた。民主化運動を弾圧した全斗煥(チョンドゥファン)元大統領の功績を認めるような発言が波紋を広げると、会員制交流サイト(SNS)に犬とリンゴ(韓国語でサグァ)の写真を投稿。韓国語で「サグァ」は謝罪という同音異義語があることから、国民を犬に見立てて謝っているとの批判を浴びた。

 一方、李氏は2日、共に民主党の選対発足式で「高い住宅価格で苦痛を訴える国民を見ながら、申し訳ない気持ちを禁じ得ない」と発言。「李在明政権ではこのようなことは二度とない」とアピールした。

 政権が効果的な対策を打ち出せないことを念頭に置いた有権者への訴えだが、党内非主流派出身の李氏が政権の不手際を強調しすぎれば、文氏側近らの党内主流派の反発を招く恐れがある。文大統領は残り任期1年を切った時期としては1987年の民主化後の大統領で最も高い40%前後の支持率を維持している。文氏や政権との関係を重視すれば、持ち味の歯に衣(きぬ)着せない発言を封じられる二律背反の難しさも抱える。

 尹氏と李氏は、ともに国会議員の経験がない異例の大統領候補。今後の言動だけでなく、自身や親族の過去の不祥事、過去の失言など新たに問題化するリスクも抱えており、情勢は変動要素が多い。 (ソウル池田郷)

※〓は十の下に田、下に日

 韓国の大統領選 満18歳以上の有権者による直接選挙で、1回の投票で最多得票者が当選する。朴正熙政権途中の1972年から全斗煥政権まで間接選挙が続いたが、政権側が民主化運動の要求を受け入れた87年の憲法改正で改められた。任期は5年で再選禁止。前回2017年は革新系の文在寅氏が41%の得票率で、保守系の洪準杓氏(24%)、中道の安哲秀氏(21%)らを抑え当選。投票率は77%だった。 (ソウル共同)

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