新幹線放火未遂 最善の安全対策を目指せ

 今度は九州新幹線の車内で、危険極まりない事件が起きた。

 おととい、熊本-新八代間を走行中の鹿児島中央行き「さくら401号」(8両編成)の3号車で、乗客の男が床に液体をまいた上でライターで紙に火を付けた。非常ボタンが押され、車両は緊急停止した。一つ間違えば大惨事になりかねない事件だったが、幸い火はすぐに消され、乗客にけがもなかった。

 男は現住建造物等放火未遂容疑で警察に現行犯逮捕された。福岡市博多区の69歳だった。

 調べに容疑を認め、東京の京王線で先月起きた乗客襲撃放火事件をまねしたと供述しているという。京王線の事件は同様の事件を誘発する恐れが懸念されていた。どんな動機があろうとも、決して許されぬ行為だ。

 新幹線はJR在来線や私鉄より密閉性が強く、トンネル区間も長い。最高速度は時速300キロ超に達する。テロ対策の観点からも、高いレベルの安全対策が求められるのは当然だ。

 長い間、深刻な事件とは無縁だったが近年、状況が変わってきた。2018年、走行中の東海道新幹線「のぞみ」車内で、刃物を持った男が乗客に突然切りつけ3人を殺傷した。その3年前には、やはり東海道新幹線で男が焼身自殺し、巻き添えで煙を吸った乗客が死亡した。

 JR各社は今回の事件を検証して教訓を共有し、再発の防止につなげなければならない。

 各社はデッキに加え客室にも防犯カメラの設置を進め、乗務員らの車内巡回を強化し、不審物のチェックもしている。

 JR九州は18年の事件後、さすまたなどの防護装備を車内に載せ、乗務員に防犯用の催涙スプレーを携帯させている。

 九州新幹線は交通の大動脈であり、来秋には西九州新幹線(武雄温泉-長崎)開業も予定される。その安全への信頼感を増すためにできることはないか。さらに検討してほしい。

 最も有効なのは、空港並みに厳格な乗客の手荷物検査の実施だろう。欧州などの一部の高速鉄道では実施している。これには待ち時間が長くなるといったデメリットもあり、新幹線の魅力を損なうことにもなる。

 それでも安全が最優先だ。各社はバランスを取りながら最善の対策を模索してほしい。進化する人工知能(AI)技術を生かせば、危険物を検知するセンサーの開発なども可能との見方もある。乗客のプライバシーにも配慮し進めるべきだ。

 京王線の事件を取り上げた社説でも指摘したが、今回のような事件を起こす側の背景にも目を向けたい。社会的な孤立や孤独はなかったか。新幹線の安全とは別に深く考えたい問題だ。

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