新たな経済対策 規模を追わず質を高めよ

 来夏の参院選を意識するあまり、大盤振る舞いが過ぎるのではないか。岸田文雄政権が19日に閣議決定した経済対策のことである。

 国と地方が支出する財政支出が55兆7千億円に膨らみ、過去最大となった。民間支出分などを加えた事業規模は78兆9千億円に達している。

 安倍政権時代に新型コロナウイルス感染症が急拡大し、国民に一律10万円の支給を決めた昨年4月の経済対策の財政支出が48兆円超だった。この際も議論を呼ぶ規模だったが、今回はそれをさらに大きく上回る。

 当時に比べ国内の感染状況はかなり落ち着いてきた。国民が期待する経済対策とはいえ規模を追うのではなく、質を高めることにもっと注力すべきだ。

 与野党ともに「ばらまき合戦」の様相を呈した衆院選で勝利した与党の要請は無視できず、規模優先になったとみられる。「成長と分配の好循環」の議論が影を潜め、既視感の強いメニューが並んだのは残念だ。

 対策の4本柱は、新型コロナ対策、次の危機への備え、新しい資本主義起動、安全・安心の確保だという。医療提供体制の拡充が最優先なのは論をまたない。感染者が自宅待機を強いられ、そのまま亡くなるような悲劇を繰り返してはならない。

 欧州などでは感染が再び拡大している。医療機関の受け入れ体制強化など第6波への備えは不可欠だ。コロナ禍に苦しむ生活困窮世帯などに必要な支援を急がねばならず、日本経済の立て直しや潜在成長率を引き上げる取り組みも重要である。

 製造業などの業績が急回復する一方、コロナ禍で厳しい状況の中小事業者は多い。事業継続のための支援を早急に届ける必要があろう。

 公明党が衆院選公約に掲げた18歳以下への10万円相当の給付も盛り込まれた。子育て支援策としても経済対策としても効果は限定的との見方が大勢だ。所得制限が設けられたとはいえ、その基準は緩い。選挙目当てのばらまきとの批判は根強い。

 対策の財源は、2020年度の決算剰余金と21年度の補正予算、22年度予算で手当てされるが、結局は赤字国債である。

 日本経済の回復は欧米や中国などより遅れている。今年7~9月期の実質国内総生産(GDP)は年率3・0%減のマイナス成長だった。民間調査機関によれば、21年度の成長率は政府年央試算の3・7%を下回る見通しだ。

 昨年来のコロナ禍で繰り返された巨額の経済対策には、政府が想定した効果があったのか。その点をしっかりと見極める国会での審議を求めたい。

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