大分のJ2降格招いたコロナ禍の悲劇

 試合終了の笛を聞き、大分イレブンが膝から崩れ落ちた。シュート数は2対20。J1最少26得点の今季を象徴する試合に片野坂知宏監督は「申し訳ない」と声を震わせた。

 昨季まで主将を務めた鈴木義宜(現J1清水)や生え抜きの岩田智輝(現J1横浜M)ら主力が昨オフに次々と移籍。片野坂監督が就任した2016年以降、自陣からパスをつないで数的優位をつくる戦術でJ3からJ1へ駆け上がったチームはシーズン序盤に7連敗と立て直しに時間がかかった。例年なら自動降格は2チームで大分は免れる順位だが、コロナ禍で昨季降格チームを設けなかった反動で今季は4チームに増えた。異例のシーズンも“悲劇”の呼び水になった。

 片野坂監督は今季限りの退任が有力だが、西山哲平ゼネラルマネジャーは「集団で個を上回るスタイルは変えない」と明言。1年でのJ1復帰を誓う。08年にヤマザキナビスコ・カップ(現YBCルヴァン・カップ)を制し、翌年に最大約12億円の債務超過で存続危機に立たされながら、行政、財界、県民の三位一体で立ち直った。栄光も挫折も知るクラブは再びはい上がる。

■主力が流出、「育成の大分」の復活がカギに

 降格の原因となった主力の流出はコロナ禍が招いた悲劇でもある。大分は昨年度決算で11期ぶりに赤字へと転落。2009年の経営危機を受けて健全化を掲げてきたクラブには、無理をして選手の慰留や大胆な補強をする余裕が財務的にも心理的にもなかった。

 チームが初降格した09年はシャムスカ監督の5季目。J3へ落ちた15年も田坂和昭監督になって5季目だった。どちらも確固たる戦術でタイトルやJ1昇格をもたらした功労者だが、長期政権に伴うマンネリ化が停滞を生み、故障や資金不足による戦力不足で戦術も崩壊した。

 片野坂監督は9月以降に3勝3分け3敗と立て直したが、指揮官頼みのチームだったことは否めない。親企業を持たない地方クラブの大分は、今季J1最少規模の約17億円だった予算が来季は減額される見通し。限られた予算で安定した戦力を確保できるかが課題となる。同規模の予算を組む鳥栖は育成組織から次々と有望選手を輩出し、主力が抜けた穴を埋める。かつて清武弘嗣(現C大阪)ら日本代表を次々と生んだ「育成の大分」の復活がJ1定着には欠かせない。

 (末継智章)

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