韓国「学歴偏重」変わるか 見直し進む教育環境の今

 学歴社会として知られる韓国で教育環境の見直しが進んでいる。政府はエリート養成を目指す特殊学校などを一般高校に転換し、高校の序列解消を推進。地方の大学では優秀な学生のソウルへの流出防止策も始まった。ただ、こうした取り組みが根強い学歴偏重の風潮を変えられるかは不透明で、海外進学を目指す若者も増えている。(釜山・具志堅聡)

 

エリート養成校を一般高校に

 釜山市海雲台区の釜山センタム女子高は、今年2月まで釜山国際外国語高という学校名だった。「外国語高校」は語学の専門家育成を目指す公立や私立の高校。同女子高は2019年に一般高に転換し、外国語高時代に入学した生徒の卒業に合わせて名称を変えた。

 現在も英語に加え、日本、中国、ドイツの3カ国語から希望する言語を選んで3年間学ぶことができる。今年の卒業生約130人のうち、最難関のソウル大に8人が合格した。(イ・ジンソプ)教頭は「多くの人は外国語高などの生徒だけが良い大学に進学すると思っているが、それが違うことを一般高として示したい」と語る。

 韓国では一般高のほかに、外国語高や独自の教育カリキュラムが認められた自律型私立高など特殊な学校がある。国際人材の育成や教育の多様化を目指して設立されたが、ソウル大など難関大の合格者を多数輩出し、実態はエリートが集まる進学校となっている。「高額な学費がかかる学校もある。結果的に裕福な家庭の優秀な生徒を選抜している」(教育関係者)と問題視する声もある。

 こうした中、文在寅(ムン・ジェイン)政権は外国語高や自律型私立高などを25年までに一般高に転換する方針。高校の序列化解消に本腰を入れている。公立外国語高の教員は「平均的な教育内容に変更されるのは残念だが、学歴社会の現状から見てもやむを得ない」と話す。

 ただ、名称変更だけで授業内容が以前と変わらない学校も出てきそうだ。「一般高に転換しても解決するとは思わない。また同じような役割を持つ別の高校に生徒が集まるだけ」と釜山の教育関係者は指摘する。

脱ソウル集中へ「地域枠」拡大

 ソウル首都圏への一極集中が進む中、釜山では優秀な人材の流出をどう防ぐかが課題となっている。釜山大は23年入学の医学部の定員125人のうち約8割を、地元出身者から選ぶ「地域人材選考」とする計画だ。釜山と周辺の蔚山市、慶尚南道の出身者を対象とする。

 もともと約3割だった地域人材選考を大きく拡大するきっかけは、昨年に大邱市で新型コロナウイルスの感染が爆発的に広がり、医者不足が起きたことだ。金海英(キム・ヘヨン)入学本部長は「市民に対する医師の割合は釜山も高いとは言えない。地域に残って住民の健康のために働く医者を輩出する必要がある」と語る。釜山大の医学部にはソウル出身などの学生が多く、卒業後、地元に戻ってしまうという問題もあった。

 釜山市東莱(トンネ)区で数学塾を経営する金允洙(キム・ユンス)院長は「地方移転した公共機関では地元人材を採用するケースが増えた」と指摘する。韓国の公務員試験は、ソウルの有名大出身者でも合格が難しいほど人気だが、地域人材枠であればより就職しやすいという。「この仕組みをうまく活用できれば、地方大学の人気が出る」と指摘。実際に地方への進学希望者が増えているという。

増える日本への進学・就職希望

 近年は韓国国内ではなく、日本の大学への進学を希望する生徒が増えている。釜山市江西(カンソ)区の高校1年生のパク・ダソンさん(16)もその1人だ。日本人向けの医療通訳を務める母親の影響で、小学6年生から日本の大学進学を目指して日本語を学ぶ塾に通う。「釜山から近い九州や福岡の大学を考えている。頑張って良い大学に入り、日本で就職したい」と意気込む。

 釜山地域の日本留学試験(EJU)を担当する釜山韓日交流センターによると、釜山のEJU応募者数は14年が640人だったが、19年に1879人とピークに達した。コロナの影響で往来が止まった20年は1502人、21年は1208人と減少したものの、日本進学の希望者は今も多い。

 同センターの担当者は「ソウルの難関大は競争があまりにも激しく、合格が難しい。日本の方が進学や就職しやすいと考える韓国の生徒は少なくなく、EJUの受験者に優秀な生徒が増えている」と説明する。

 韓国社会に詳しいニッセイ基礎研究所の金明中(キム・ミョンジュン)主任研究員は「韓国は政府が変わるたびに教育制度が大きく変わって混乱し、生徒や親の不安が高まっている。韓国は大学進学率が約7割と日本よりも高く、雇用のミスマッチが生じて若者が就職できない。専門学校を作るなど大学の改革が必要だ」と指摘する。

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