「LGBTQ+を身近に」高校生のリアルを映画化 傷ついた体験を基に制作

 福岡県の高校生8人が、LGBTQ+(性的少数者)への理解を広げ、差別をなくしたいと映画を作っている。映画好きの高校生の呼び掛けに、当事者らが集まった。「身近に捉えてもらう」ことをテーマに、学校生活で自分たちが傷ついた体験も織り込んで、一から脚本を練り上げた。来月にも北九州、福岡両市で撮影を始め、来年5月に完成予定。等身大の映画で多様な社会の実現を目指す。

 呼び掛けたのは、監督を務める小倉高2年の古川瑶子さん(17)=北九州市門司区。1年の社会の授業で、心と体の性が一致していない「トランスジェンダー」のモデルの話を聞いた。LGBTQ+についての知識はほとんどなく「男の子? 女の子?」との疑問が口に出た。先生に「どっちかの概念じゃない人もいるんだよ」と諭され、はっとした。

 学ぶうち、身近に感じた。「身近な存在だと広まれば差別もなくなるんじゃないか」。いつか自分で撮ってみたかった映画での発信を思い立った。国連の持続可能な開発目標(SDGs)などについて学ぶ県内の交流事業で出会った高校生たちに「LGBTQ+の映画を作ってみたいから、話を聞きに行きませんか」と声を掛けた。

 5月、福岡市や桂川町などから応じたメンバーと始動。映画製作の経験はなく、映画を自主製作した高校生にどのくらいの資金が必要か聞くなど、製作方法を調べるところから始めた。当事者団体に取材もした。

 活動の中で、1人が古川さんに打ち明けた。「実は私はバイセクシュアル(両性愛者)。企画してくれてありがとう」。別の友人に「そっち系なんだ」とやゆされ、傷ついた体験も話してくれた。

 「男なんだからしっかりしなさい」という教師の言葉に性的少数者への無配慮を感じたメンバーもいる。体の性は女性で性自認が分からない「クエスチョニング」のメンバーは、学校にズボンをはいていったとき「似合ってるね」という友人のひと言に救われた。そんな自分たちの経験や違和感を、物語に反映させた。

 <主人公は、なんでもできる女子高校生。だが、お父さんが2人、ゲイだという秘密がばれ、いじめが始まる―>

 「当事者は差別に敏感だけど、そうでない人たちにどんな言葉や行為が傷つけるかを知ってほしい」。自分のこととして考えやすい設定にした。

 タイトルは「明日、晴れますか」。カンヌ国際映画祭で最高賞を受賞した是枝裕和監督に思い切ってメールしたところ、オンラインでのインタビューがかなった。「タイトルに二つの意味を込めると、見終わった後に印象が変わってすてきな映画になる」というアドバイスを生かしている。

 出演者のオーディションはほぼ終わり、演劇専攻の高校生や美術チームなど約30人が集結。来月から、動画も撮影できる一眼レフカメラを借りて撮影を始める。修学旅行の新型コロナウイルス対策を参考に、感染防止策も万全にする。

 「これまで私の言葉で知らないうちに誰かを傷つけていたかもしれない。差別をなくすにはどうしたらいいか、一緒に考えて」と古川さん。

 製作費は80万円を目標に、30日までクラウドファンディング(CF)で募る。CFサイト「CAMPFIRE」で「明日、晴れますか」と検索。完成後は寄付者に配信するほか、イベントなどでの上映も計画している。 (後藤希)

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