初のテントサウナに大慌て ズッコケ中年3人組の「合同稽古」

サウナワールド ととのう人たち(6)

 九州、福岡に数あるサウナを訪れ、経験値を上げようと日々まい進している西日本新聞meサウナ部。実績を重ねていく中、未踏のものもあった。近年のアウトドア志向の高まりとともに、人気上昇中のテントサウナである。福岡市西区に体験できる場所があると聞き、部員3人による「合同稽古」を決行した。

 

 「サ道(サウナを究めるための道)を追い求める稽古だ。厳しいものになる」

 言葉とは裏腹に、大自然の下、サウナを楽しめるとあって、にやけ顔が止まらない3人。10月初旬に訪れたのは、今年1月にオープンしたばかりのグランピング場「唐泊ヴィレッジ」だ。福岡市中央区天神から車で40分。糸島半島の北東部分にあるのどかな漁港に降り立つと、トンビの鳴き声、磯の香りが出迎えてくれる。台風の影響で荒天も覚悟していたが、朝から青空が見えてひと安心した。

唐泊ヴィレッジ近くの漁港。青い空と海が映える

 指定の駐車場で待っていると、なぜか東南アジアなどで走っている三輪自動車「トゥクトゥク」がお迎えに来てくれた。非日常感を体験するための演出なのだろうか。運転は「唐泊ヴィレッジ」スタッフの高松直紀さん。テントサウナのナビゲーターでもある。

唐泊ヴィレッジまではトゥクトゥクで移動する。非日常感にワクワクすること間違いなしだ

 5分ほどトゥクトゥクに揺られ到着した唐泊ヴィレッジの広さは、約2ヘクタール。宿泊施設やキッチンスペースがあり、手軽に自然を楽しめる。東西1キロにわたる美しい「うしろ浜」が北側にあり、海をサウナ後の「水風呂」代わりに使用できるとのこと。

 「ととのう条件がそろってるねえ」。にわかにテンションが上がる平均年齢42.7歳の男性部員3人に、その後訪れる“悲劇”を予想する思慮深さはなかった。

欲深き3人の甘いもくろみ

 テントサウナはフィンランド発祥の老舗「サボッタ」製。アウトドアグッズなどを手がける1955年創業のブランドである。約3メートル四方で、ちょうど3人が楽しめる広さだ。唐泊ヴィレッジには西側に専用のテントサウナ設置スペースがあるが、約50メートル先のうしろ浜にも設営できる。

 施設からお借りしたテント、ペグ(地面に固定するための金属製のくい)、ロープ、サウナストーブ、サウナストーン、排気口などをうしろ浜に運び込んだ。道中、多少の漂着ごみはあったが、白い砂浜と海は美しい。

重い重いサウナストーブ。砂浜に足をとられながら必死に運ぶ

 道具を抱えて何度も往復し、サウナに入る前に既に汗だくになった3人。「もう少しの我慢。その先に桃源郷がある」。うしろ浜に到着後、期待を胸にペグを地面に打ち込んでいった。ここでこの日最大の誤算…、いやもくろみの甘さが露呈してしまう。

 晴天とはいえ、台風の影響で強風が吹く。ペグはまったく安定せず、飛ばされそうになってしまうのだ。「サウナを出てすぐに冷たい海に飛び込むために、うしろ浜にテントを立てたい」。欲深き3人は、普段見せたことがない必死さで40分間もがいたが、一向に作業は進まない。

場所を改め、テント設営へ汗をかくサウナ部員。お気に入りのかわいいサウナハットが映えている

 「これは厳しいですねえ」と設営の助言をくれていた高松さんも苦笑い。「万が一、火事にでもなったらサウナーとして許されない」と断念し、再び重い重いサウナテント一式を持って、べそをかきながら戻ることになった。

 サ道はそんなに甘いものではない。

テント固定のロープは6本

 専用設置スペースに戻った3人。防風林のおかげで、ここなら問題なく立てられそうだ。「ハプニングもテントサウナのだいよ」。負け惜しみを口にできるくらいの体力はぎりぎり残っていた。

テント完成までもう少し。「早くサウナに入りたい」

 再び設営作業を開始した。テント固定のためのロープは6本。対角上でピンと伸ばしながら、ペグとつなぎ、しっかり地面に固定していく。ロープが緩むとテントは安定感を欠く。サウナを体験している間にテントが倒れたら大変なので、ここは入念な作業が必要だ。

防風林内ではテントが安定して設営できてひと安心。自然をなめてはいけない

 その後、テント内にストーブを置き、表面にストーンを敷き詰めていく。30個ほど。なるべく隙間ができないように、置いていくのがこつだという。続けてストーブ下部にある小窓から端材で作ったまきを入れ、着火する。まきは随時、追加しないといけない。小窓の取っ手は、非常に熱くなり直接触るとやけどする。「厚い手袋の着用が必須です」。高松さんは厳しい表情で何度も念を押してくれた。

サウナストーブにセットされたまきに火をつける高松さん。本来は、利用者自身で行う

 30分ほどして石が熱され、テント内の室温が70度を超え、やっとサウナを利用できるようになった。普段は90度近い温度を楽しむ3人だが、ストーブが座席のすぐ隣にあるため、数分入っていたらジワリと発汗する。

 「やっと入ることができた」「70度でも十分な熱さやね」。ズッコケ中年3人組にようやく笑みが戻った。

ジュジュジュッ、ジュワー

 テントサウナ内では、アロマ水をサウナストーンにかけて蒸気を発生させる「ロウリュ」ができる。「ラベンダー」など、お気に入りのものを数種類準備していたが、高松さんのお薦めの「ヒノキ」を使用した。

アロマ水を使用しテント内でロウリュするといい香りが広がった。しっかり汗をかき、仕事のストレスが少し解消された気がした

 ひしゃくを使って少しずつ、くるりと円を描きながらストーンにアロマ水をかけていく。「ジュジュジュッ、ジュワー」。テント内に蒸気、そして豊潤な香りが広がり、こうをくすぐる。ヒノキには鎮静、リフレッシュ効果があるらしい。

サウナ内は3人がちょうど入ることができる広さ。室温は70度を少し超えるくらいだったが、十分汗をかくことができた

 「これ以上何をリフレッシュする必要があるのだろう」と自問自答しながら、何度もロウリュをする3人。10分後、70度以上の蒸気がテント内を包み、玉のような汗が止まらなくなると、誰ともなく外に飛び出した。

 海まで懸命に走り、一切の迷いなくザボン。「くーっ」。水温は23度。荒々しい波が火照った体を一気にクールダウンしてくれた。

海を「水風呂」代わりにするサウナ部部員。荒れた海には危険も多いので、注意が必要だ

 テント近くに設けられた休憩スペースで寝そべると、心地よい風が吹いていく。「自然に感謝やね」。謙虚な言葉がためらいなく飛び出した。心身ともに「ととのった」証しだろう。

外気浴でととのうズッコケ中年3人組。ほんの少しだが日頃のストレスからおさらばしている瞬間だ

 サウナ-海-休憩。これを3セット繰り返したところで、この日はお開き。最高の癒やしを与えてくれた「自然」だが、一歩間違えれば、事故も起きることを認識した。今後、テントサウナを利用する方は、われわれの苦闘を反面教師にして楽しんでほしい。

(西日本新聞meサウナ部・永松幸治、布谷真基、富田慎志)

 唐泊ヴィレッジ 糸島半島(福岡県)の北東部に今年1月オープン。2ヘクタールの耕作放棄地が約50年ぶりに開拓され、グランピングが楽しめる場所に生まれ変わった。うしろ浜と呼ばれる遠浅のプライベートビーチが隣接し、夏は海水浴が楽しめる。貸しテントやキャンプ初心者でも安心のインスタントハウスがあるほか、テントの持ち込みもできる。問い合わせは080(6781)8727。ウェブサイトはこちら。

唐泊ヴィレッジには、かつてアメリカインディアンが住居として用いた円すい形テント「ティピ」もある

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