石油備蓄放出 産油国との対話を続けよ

 原油価格の高騰が新型コロナ禍からの回復を目指す日本経済の足かせとなりかねない。政府は国家石油備蓄を一部放出し、補助金で石油製品価格を引き下げる異例の措置を決めた。

 石油備蓄の放出は米国が主導し英国や中国、インドなど大量消費国が足並みをそろえた。国際協調が実現した意味はあるものの絶対量が少なく、効果は限定的と言わざるを得ない。今後も連携し、産油国に粘り強く増産を働き掛けるしかない。

 日本の石油備蓄は紛争による輸入停止や災害などに備えたものだ。これを価格抑制のために放出するのは初めてとなる。

 国内の石油備蓄は国と民間を合わせて9月末で国内消費の242日分ある。国家備蓄は145日分で、目標である輸入量の90日分程度を上回る。超過分の一部を市場で売却する計画だ。

 政府は法令には反しないとしているが、備蓄本来の趣旨とは異なる。どこまでなら許容される措置なのか、より分かりやすい説明と議論が必要だろう。

 米国が備蓄放出を各国に呼び掛けたのは、国内のガソリン小売価格が1年前の1・5倍に上がって国民の不満が高まり、バイデン政権の支持率が大きく下がっていることが大きい。

 これまでのところ市場の反応は冷ややかだ。備蓄放出の発表後、ニューヨークや東京の市場では原油先物価格が上昇した。来年には需給が緩むとの見方から産油国は増産に消極的だからとみられている。

 原油価格は昨年の新型コロナの世界的大流行で需要が激減し1バレル20ドル前後まで落ちた後、世界経済の正常化に伴い一時1バレル80ドルを突破した。その後も2014年以来、7年ぶりの高値圏で推移している。

 地球温暖化対策で企業が石油など化石エネルギーへの投資を絞ったことが、価格高止まりにつながった面もある。現状が続けば、脱炭素化の取り組みが加速し、石油離れが進む可能性がある。価格の安定は産油国、消費国の双方にとって重要だ。

 今後の動向は最大の産油国でもある米国が左右するのではないか。価格下落で落ち込んだ石油掘削設備の稼働数は戻りが鈍く、増産の余地が大きい。米国にも増産を求めるべきだろう。

 日本経済には原油高と円安ドル高のダブルパンチである。政府はガソリン価格が全国平均で1リットル170円を超えた場合、元売りに補助金を出し卸値を最大5円引き下げるという。来年3月までの時限措置だが、その効果はかなり不透明だ。

 今後、燃料や暖房用の石油代がかさみ、所得増のない物価上昇を招く恐れもある。幅広い産業への目配りが欠かせない。

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