「妊娠すれば国に帰される」出産後の“復職”わずか1.7%の技能実習制度

 外国人技能実習生が妊娠、出産しにくい状況がずっと続いている。制度上は産休や育休が認められているものの、周知されておらず、実習を中断後に復帰するケースは極めて少ない。産み、育てながら働けない国、ニッポン―。実習生が日本の労働現場を支える隣人であることは多くが認めている。制度の改善、人道的な対応が欠かせない。

 「『妊娠すれば、国に帰される』とのうわさに惑わされ、誰にも相談できない状況だ」。今月14日、福岡市であった在留資格制度や健康と妊娠をテーマにした勉強会。各国の技能実習生ら約30人を前に講師が語り掛けた。来日4年以上のベトナム人技能実習生の男性(24)は「日本で生活していく上で大事なことなのに、初めて知ることがいっぱいあった」。

 技能実習制度は1993年に創設。途上国の発展を担う人材を育成する狙いがあり、日本人と同じように労働基準法や男女雇用機会均等法が適用される。妊娠、出産時は実習を一時中断でき、一時金などの支援制度や休暇も使えるのが法律上の“建前”。ただ、出産後も、子どもの同居には母国からさまざまな資料を取り寄せたり、日本の役所で複雑な手続きを踏んだりする必要がある。その高いハードルをクリアできなければ、生まれたばかりの子どもを母国の家族に預けるしかない。

 厚生労働省によると、2017年11月~20年12月、妊娠、出産を理由に実習を中断した637人のうち、再開が確認できたのは11人(今年8月時点)。1・7%にすぎない。事実上、子どもの帯同を認めていない「人に優しくない制度」(識者)が、実習生を出産やその後の復帰から遠ざけている。

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 出入国在留管理庁の統計では、実習生の人数は20年12月現在で約37万8千人。出産の機会が多いとされる10~30代の女性は約14万8千人。在日外国人を支援する「コムスタカ-外国人と共に生きる会」(熊本市)の中島真一郎代表は「637人という数字は氷山の一角。実際は数倍に及んでいてもおかしくはない」と指摘。そもそも制度の存在も知らされていないケースが多く「帰るしかないと思い込まされている」のが現状だと訴える。

 実際、支援団体には困窮した実習生から「誰にも相談できない」「妊娠がばれれば中絶するしかない」などの相談が後を絶たない。厚労省は実習生の勤務先や監理団体に対して、妊娠などを理由に不利益に扱うことを禁じていること、適切に対処すべきことを、書面を通じて「注意喚起」している。形式上の指導にとどまっているとみる中島代表は「機械のように働かせたいというのが本音ではないか」といぶかしむ。

 日本の技能実習制度に対しては海外からも厳しい視線がある。米国務省は21年版報告書で「外国人労働者搾取のために悪用し続けている」とした。

 だがそれは、対外国人だけでもないようだ。妊娠、出産すれば職場にいづらい仕組みは、変わらない今の日本社会、会社にもある。

(梅沢平)

■マタハラがまん延する日本社会の映し鏡

 上智大の田中雅子教授(国際協力論)の話 技能実習生の妊娠や出産に壁があるのはマタニティーハラスメントがまん延する日本社会の映し鏡。当事者が相談しやすい環境を整えることは急務で、現在の制度を当事者はもちろん、関係先に徹底する必要がある。中断した実習生の追跡調査も進めるべきだ。だがそもそも今の制度は、実習生が子育てをしながら働くことを想定しないルールになっている。最終的には、制度そのものを見直すことが求められる。

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