非核三原則50年 国是の価値は増している

 核兵器を「持たず、つくらず、持ち込ませず」という非核三原則が国会で決議されて今月で50年になる。被爆の実相を最も知る日本はその意義を省み、核廃絶への歩みを考えていきたい。

 それぞれの原則は戦後、議論されてきたが、1967年に佐藤栄作首相が国会答弁で「三原則」と表明した。米国に統治されていた沖縄や小笠原諸島の返還協議が進む中、国民の反核意識が強く、沖縄の米軍基地にある核兵器について返還後の扱いが焦点になっていたからだ。

 沖縄返還前年の71年11月24日に三原則を柱とする決議が衆議院で採択された。その3年後には提唱者として佐藤氏がノーベル平和賞を受けるなど、三原則は日本の立場を世界に示すメッセージにもなり、歴代政権は国是と位置付け、堅持してきた。

 一方、日本は同盟国米国の核抑止力に依存するため、非核政策を徹底できず、三原則のうち「持ち込ませず」にはしばしば疑念の目が向けられてきた。

 米軍の核搭載艦船の日本通過・寄港を黙認する日米間の密約が指摘され、自民党政権は否定してきたが、民主党政権時代に密約関連文書の存在が確認された。原則の空洞化は否定しようがない。近年は中国や北朝鮮の軍拡に対抗し、核搭載艦船の通過などを認め「非核2・5原則」に見直すべきだとの声もある。

 日本の安全保障環境の厳しさは言うまでもない。それでも三原則が北東アジアの核軍拡に一定の歯止めとなってきたことは間違いなく、抑止力の議論は三原則を前提に進めるべきだ。

 岸田文雄首相が自民党総裁選の中で「北朝鮮に大量破壊兵器の放棄を訴えている中、日本が見直しの議論をすると間違ったメッセージを与える」と主張したのはもっともなことである。

 バイデン米政権は「核の先制不使用」政策の導入を検討している。敵が核攻撃をしない限り核兵器を使用しない趣旨で、実現すれば世界の核廃絶への一歩となり得る。米国内にはロシアや中国の核戦力増強を脅威と捉え、慎重論も根強い。

 日本政府は核抑止力が弱まることを危ぶみ、米国に懸念を伝えたとされる。だが非核三原則を国是とする日本こそ米国の先制不使用を阻むのではなく、後押しする方に力を注ぎたい。それが唯一の戦争被爆国として果たすべき役割ではないか。

 今こそ非核三原則の価値は増していると考えたい。

 核兵器禁止条約を巡り、ドイツの次期政権が来年3月の第1回締約国会議にオブザーバーで参加する方針を掲げた。先進7カ国の一角で、かつ米国の核抑止力に頼る同じ立場である日本の姿勢が一段と問われよう。

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