日本郵便及び腰、局長会の不正放置 自民とパイプ「持ちつ持たれつ」

【ひずむ郵政】局長会 政治と特権㊦

 「会社としては、局長会の問題には関与できない」

 パワハラ被害を訴えた郵便局長たちは、会社の思わぬ回答に言葉を失った。

 加害者は、福岡県内の郵便局長だった。約70局を束ねる統括局長で、任意団体「全国郵便局長会」(全特)の幹部でもあった。2019年1月、日本郵便で働く息子の不祥事を内部通報したと疑い、部下の局長に通報を認めるよう脅したとして、強要未遂罪で在宅起訴され、今年6月に有罪判決を受けた。

 被害を受けた局長たちは、こうしたパワハラを同社のコンプライアンス部門に繰り返し相談していた。脅された際の音声データも提出したが、会社はかたくなに介入しようとはしなかった。捜査当局が動くまで被害は続き、体調を崩して休職する局長も出た。

 「俺ぐらいになると、(日本郵便の)本社がものすごく気を使います」

 統括局長は被害者に、こう言い放った。そして「そのうち、誰が(内部通報した)犯人か情報が入ってくる」とも語った。

 実際、その後の同社の調査で、コンプライアンス担当の常務執行役員が、通報者に関する情報を統括局長に漏らしていたことが分かった。被害者側の弁護士は「事件では、会社が局長会の問題を避け、犯罪行為まで放置する深刻な実態が明らかになった」と話す。

「3本柱」強く要求

 なぜ日本郵便はこんなにも及び腰なのか。

 親会社の日本郵政の大株主は政府で、日本郵政グループは、政権から経営陣の人事などさまざまな面で介入を受ける。全特は参院選の度に自民党公認の組織内候補を党内トップ当選させて政治力を見せつけ、政府、自民党と太いパイプを維持している。その結果、任意団体ながら郵政グループに大きな影響力がある。

 あるグループ会社幹部は「局長会からにらまれれば、面倒なことになる」と漏らす。全特役員を務めた経験のある局長は「会社も政治との交渉で全特を利用し、持ちつ持たれつの面がある」と明かした。

 全特が会社に対し、強く要求してきたのが「3本柱」と呼ばれる仕組みだ。

 それは、局長採用の際、局長会が事前に人選をする▽原則転勤がない▽局長が局舎を所有することができ、会社から賃料を受け取る-の三つだ。

 全特は「地域に密着するため」と強調するが、九州のある郵便局員は「地域との密接な関係を選挙活動に利用したいだけじゃないか」と批判する。「既得権益」と問題視されても、会社は3本柱を容認してきた。

「これまでになく踏み込んだ」指示文書

 日本郵便がカレンダー配布問題で全特会長ら96人の処分を発表した26日、同社は全国の局長に1通の指示文書を出した。

 文書では、職務上の上下関係を背景に、政治活動などを強要すればパワハラに該当すると周知し、有給休暇を取得して政治活動を行う場合は郵便局の運営に支障が出ないよう配慮を求めた。現場では「これまでになく踏み込んだ内容」と受け止められている。

 日本郵政の増田寛也社長は10月末の記者会見で、選挙活動に参加する人物でなければ局長になれない仕組みについて「見直さなければならない」と明言した。東京の局員は「局長会の行き過ぎた活動で、郵政グループの信用が損なわれていると、危機感を持ち始めたのではないか」と話す。

 東京国際大の田尻嗣夫名誉教授(金融論)は「社員がつくる任意団体に、経営が振り回される実態は異常で、企業の統制が取れるはずがない。経営陣は、局長会との向き合い方を全面的に見直すべきだ」と指摘する。

 (宮崎拓朗)

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