ペンションからホテルに、南阿蘇「野ばら」営業再開 熊本地震5年半

 2016年4月の熊本地震で被災し、休業していた熊本県南阿蘇村の「ペンション風の丘 野ばら」が、プチホテル「南阿蘇 野ばらINN」として営業を再開した。震災から5年半。阿蘇のペンションの草分け、通称「メルヘン村」の6軒の中で唯一現地で再建。経営者の栗原有紀夫さん(56)は「自分の仕事を取り戻すだけでなく、お客さまの思いもこもった野ばらを再開したいとの思いでやってきた」と語る。

 営業再開の15日は、待ちわびていた常連客らが船出を祝った。パソコンから復元した顧客データを基に出した案内はがきは千通。「こんなにもたくさんのお客さまに支えられてきたんだ」と改めて思ったという。

 父の史郎さん(83)が現地に創業したのが1979年。立野峡谷など眺望抜群の丘の上で6軒が「仲良く助け合ってきた」。経営を実質的に引き継いでから16年の後、地震に襲われた。長男は小学校入学直後で、長女はまだ1歳だった。

 6軒で一緒に試みた現地再建への道は、県の災害復旧事業との絡みで断念。集団移転も考えたが、離脱せざるを得ない仲間もいた。有紀夫さんが村内に2万平方メートルの土地を見つけ、仲間と3軒で購入直前まで進めた話も、銀行融資が下りず頓挫。村内の旅館から誘われ、一時は転職を考えた。

 光明が差したのは20年の年明け。敷地に係る県の復旧事業が1年前倒しで完了することになり、事業再建を支援するグループ補助金の活用にめどが付いた。現地での再建を再び決意し、銀行の審査も通った。

 新しい建物は木造2階建てで、木の風合いを生かしたデザインを採用。8室から5室に減らした一方で、岩盤に達するくいを120本打ち「木造では最強クラス」の耐震性とした。

 業態は家族でもてなすペンションの温かみとホテルの機能性を併せ持つ「小さなホテル」。ペットを帯同できる部屋も設けるなど、従来のペンションとは違う方向性を見つめている。

 「宿泊業は朝から晩まで忙しく、子どもたちの相手もほとんどできなかった」と言う有紀夫さん。震災後は家族と向き合う時間ができた。息子のサッカーの試合を見て「日常」のありがたみに気付き、再建へのエネルギーをもらった。「これからは家族と仕事のバランスを取りながら人生を楽しもう。5年半の間に、考えが変わりました」。庭では客から贈られたバラの苗が枝を伸ばしている。「南阿蘇 野ばらINN」=0967(67)1815。

 (堀田正彦)

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