「子どもホスピス」福岡にも 家族と一緒に…開設目指しNPO奮闘中

 小児がんや先天性疾患など重い病気や障害のある子どもと家族が過ごせる「子どもホスピス」を福岡で開設しようと、市民団体が奮闘している。理解を深めて支援の輪を広げようと、医療関係者が11年前から手弁当で続けてきた活動は、新たな局面を迎えている。 (編集委員・下崎千加)

 「レモネードはいかがですか」「駄菓子のつかみ取りや射的もあるよ」。21日、福岡市南区の駄菓子店の前で道行く人に声を掛けていたのは、NPO法人「福岡こどもホスピスプロジェクト」のメンバー。開設のための資金集めだけではなく、病気で学校に行ったり、友達と遊んだりすることができない子どもがいることを知ってもらうのが目的だ。支援の輪は少しずつ広がってきた。

 その中心に内藤真澄さん(57)の姿があった。2011年11月、長男駿君=当時(3)=を白血病で亡くした。2年近く九州大病院に入院。感染対策のため、付き添いが認められた内藤さん以外、みとりの時期までは父親とも会えなかった。

 病室から一歩も出られず、食べたい物も食べられず、だんだん笑顔も減っていったという駿君。「もっと子どもらしいことをさせてあげたかった。親子3人の時間をつくりたかった」と内藤さんは話す。

 がんの子どもや親を支援する中で、同じように悔やむ親、退院後は再発の不安で押しつぶされそうになっている家族に出会った。人工呼吸器やチューブで栄養を補給する経管栄養を使って在宅で療養している障害児の家族が、外出もままならない毎日を送っていることも知った。

 看護師でもある濱田裕子・第一薬科大教授や小児科医らが2010年から子どもホスピスの開設を呼び掛けているのを知り、イベントを手伝うなどしてきた。「重い病気の子も家族と一緒に笑い合って過ごせて、看護師さんに相談できる『第2のおうち』のような場所」を願う。

 ただ土地の取得や建設に億単位の費用がかかり、その後も看護師などの人件費や運営費が必要だ。コロナ禍で寄付集めも難航していた今年6月、転機が訪れる。取引が10年以上ない「休眠預金」を民間公益活動に生かす国の事業の助成先に、同様の取り組みをする北海道などの4団体とともに選ばれたのだ。3年間で1800万円の助成を受けることになった。

 これを原資に九大病院近くの空き店舗に活動拠点を設置。内藤さんと、がん経験者で事務処理が得意な犬丸勤さん(57)が専従職員になり、企業や自治体を回って協力を依頼している。

 参考にしているのは、無償貸与の市有地に子どもホスピスを建て、寄付金で運営している大阪市と横浜市のケース。病気の子どもと家族の受け入れだけではなく、入院中の子どもの家族が滞在でき、遺族に寄り添うグリーフケアも担う地域に開かれた施設を目指すという。内藤さんたちは「3年間で開設への道筋を付けたい」と話している。

 賛助会員(年会費個人3千円、企業・団体3万円)も募っている。同プロジェクト=080(3985)5106。メール=toiawase@kodomo-hospice.com

 子どもホスピス 1982年に英国で誕生し、欧米に広く普及。がん患者の緩和ケアやみとりに特化した大人のホスピスとは異なり、終末期でない医療的ケア児なども対象になる。通所や短期入所の他、遺族のグリーフケアやイベントを行う。淀川キリスト教病院(大阪市)や国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)にある「病院併設型」は、障害福祉サービスの短期入所が中心となる一方、大阪市と横浜市に有志が建てた「地域コミュニティー型」は親やきょうだい、地域の人も利用でき自由が利くが、運営費は寄付金や助成金頼みとなっている。

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