ウイグル族増えれば「政治的リスク」 人口抑制促すシンクタンク論文

 【北京・坂本信博】中国は強制的にウイグル族の人口増を抑え込もうとしてきたのか。中国政府は不妊手術の強要などを否定するが、西日本新聞が入手した新疆ウイグル自治区政府系の研究機関幹部の論文は、ウイグル族が増えればテロに走ったり、漢族を憎んだりして「政治的リスクがより大きくなる可能性がある」と指摘。少数民族に狙いを絞った人口抑制策の実施を強く促していた。 

 論文は2017年に中央社会主義学院学報に掲載された「新疆の人口問題と人口政策分析」。新疆ウイグル自治区共産党委員会のシンクタンクである新疆社会科学院の李暁霞・民族研究所長が執筆した。

 論文は「新疆の人口発展の最も大きな問題は、少数民族の人口が急増し、漢族の人口が伸び悩んで格差が広がっていること」と指摘。少数民族と漢族の人口差が広がることで「単一民族の領土所有意識が強まり、国家や中華民族としてのアイデンティティーが弱まっている」「少数民族の人口増加率を抑制し、人口構造を調整することは新疆の長期的安定を実現するための重要な道筋」と強調した。

 さらに「ウイグル族の多い新疆南部で家族計画政策(産児制限)が十分に実行されておらず、計画外出産が比較的深刻になっている」「過激な宗教思想などの影響で避妊に消極的な人もいる」と分析。ウイグル族と漢族の人口差が広がれば「過激な宗教思想が浸食して世俗的な体制を否定し、暴力的なテロ活動を行ったり、漢族を拒絶したり憎んだりしやすくなる」「より大きな政治的リスクが生じる可能性がある」と主張している。

 その上で、漢族の移住促進には限界があり「少数民族の人口抑制政策を確実に実行し、計画外の出産をなくすべきだ」と提言した。

 論文には「多くの人が強制的に家族計画政策を受け入れざるを得ない状況にあり、当初は抵抗が大きかった」「新疆南部の農村で、少子化家庭の奨励度をさらに高めたい」といった記述もあり、強制的な人口抑制策の実施をうかがわせた。

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 中国国家統計局が20年に10年ぶりに実施した国勢調査によると、漢族が大幅に増えてウイグル族の比率が下がっている。

 漢族のこの10年の増加率は23・7%で00~10年(17・9%)からさらに伸びたが、ウイグル族の増加率は19・8%から16・2%に鈍化。1953年の新疆の人口は478万人で、75・4%をウイグル族が占めていたが、20年調査ではウイグル族45・0%、漢族42・2%となり、その差は前回調査の半分に縮まった。ウイグル族の人口抑制策が強化される一方、漢族の移住が促進されたことなどが要因とみられる。

 自治区では、不妊処置を受けた少数民族の夫婦らに「光栄証」を授与し、年金や奨励金を支給したり、その家庭の子どもが高校や大学を受験する際に加点したりするなどの政策が導入されてきた。家族計画について共産党組織が住民への「宣伝」や「管理」を強化し、広い範囲で住民にまとめて手術を実施したとの指摘もある。新疆統計年鑑によると、18年時点で光栄証の授与者は計168万7834人に上っている。

 中国の習近平指導部は14年に新疆で暴動が起きた後、「テロや分離主義に対抗する」との基本方針を策定し、ウイグル族への抑圧政策を強めたとされる。新疆トップの自治区共産党委員会書記に陳全国氏が就任した16年から統制が加速したと指摘されており、本紙が入手した論文もその方針に沿ったものとみられる。

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