日大理事長逮捕 組織の自浄作用取り戻せ

 国内最大規模のマンモス私大トップが東京地検特捜部に逮捕された。所得税約5300万円を免れた脱税容疑だ。教育の世界でも異例の不祥事である。

 逮捕されたのは日本大学の田中英寿理事長で、1日の臨時理事会で辞任が承認されたが、それで幕引きとはならない。

 捜査の入り口となった日大医学部付属病院の工事などを巡る背任事件では、起訴された元理事と医療法人の前理事長らに大学から約4億円もの大金が不正に流れたとされる。

 捜査を通じ、元理事らは田中容疑者に1億円以上を提供した疑いが浮上したという。田中容疑者の自宅の家宅捜索では1億円以上の現金が見つかった。田中容疑者は否定しているが、こうした金を所得申告しなかった脱税容疑が持たれている。

 私立大は学費や国の補助金により運営されている。そこから巨額の金が大学トップやその周辺に流れ込んでいたとすれば、言語道断の「大学の私物化」と言うほかない。特捜部は脱税事件と背任事件の関連をはじめ、日大からの不正な金の流れの全容を明らかにしてほしい。

 それにしても、一連の事件の深刻さに比べ、日大側の対応の鈍さにはあきれるばかりだ。

 特捜部が強制捜査に入った9月以降、日大は事件に関する詳しい説明を行っていない。文部科学省は説明責任を果たすよう指導しているが、日大はホームページに簡略な報告を掲載する程度にとどまっている。

 学生、教職員から不信や憤りの声が聞こえる。当然だろう。「大学のイメージが悪化し、就職活動に影響しないか」との不安を覚える学生もいるようだ。

 日大は2020年度に約90億円の私立大学等経常費補助金を交付された。学生はもちろん社会に対して十分な説明を尽くすことは義務ではないのか。

 それを阻んできたのが、大学内外で「日大のドン」とも呼ばれる田中容疑者の存在そのものだという。08年に理事長に就任し、側近を重用する一方で、意に沿わない職員は閑職に左遷するなどしてワンマン支配体制を築き上げたとされる。

 18年に起こった日大アメリカンフットボール部の悪質タックル問題でも、理事長の田中容疑者が記者会見などの場に現れ、説明責任を果たすことはなかった。当時から大学トップとしての資質を問う声はあった。

 日大の組織の統治が機能不全に陥っているのは確かだ。5期13年に及ぶ田中容疑者の理事長時代と今回の事件を検証して自浄作用を取り戻し、運営を抜本的に立て直すべきだ。120万人を超える卒業生を世に送り出してきた大学の責任である。

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