「民主党」は立民?国民?案分された35万票の民意 専門家「公正揺るがす」

 10月31日に投開票された衆院選の比例代表九州ブロックで、立憲民主党と国民民主党が共に略称とした「民主党」と記入された票が35万6832票に上ったことが、西日本新聞の集計で分かった。どちらの党への投票か判断がつかず、公選法の規定で両党の得票に応じて案分された。有効投票数の5・7%、両党の得票合計の23・1%を占め、国民の最終得票より多かった。識者は「公正な選挙を揺るがす事態」だとして、制度の改正を求めている。

 本紙が各地の選挙管理委員会に取材して集計したところ、同ブロックで「民主党」票が最も多かったのは福岡県の10万8220票。有効投票に占める割合では沖縄県の7・9%が最高だった。

 案分の結果、小数点4位以下を切り捨てた29万2981・440票が立民に、6万3850・267票が国民に振り分けられ、両党に上乗せされた。得票に占める案分の割合は立民が23・1%、国民が22・8%に達した。

 今回、九州ブロックでは立民が4議席、国民が1議席を獲得したが、議席を得られなかったれいわ新選組と社民党の得票数は、案分が加えられた国民に迫っていた。同じ略称が使われなければ、各党の議席数が変わっていた可能性がある。

 公選法は政党名を略称で投票することを認め、複数の政党の同一略称を禁じていない。ただ、案分は有権者の意思を正確に反映しないばかりか、小数点以下に分配されることを前提に投票すれば、1票で複数の政党を支持することも可能。実際、立民、国民両党の支持母体である連合の関係者によると、10月の衆院選投票前に「両党のどちらも支援しているので、あえて『民主党』と書く」と語る組合員もいたという。

 九州大大学院法学研究院の岡崎晴輝教授(政治理論)は「1票を分割して複数の政党に投票することが事実上可能となる。他の政党に投票した有権者から不公平と見なされても仕方がない」と指摘。「政党名を書く『自書式』の投票方法から、投票用紙にあらかじめ記された政党に○などを付ける『記号式』に変えれば、こうした問題は起こりえない。改善すべきだ」と訴えている。(川口安子、金子晋輔、湯之前八州)

再編時に略称譲らず…両党に重い責任

 立憲民主党と国民民主党がいずれも略称を「民主党」とした背景にあるのが、昨年9月の野党再編だ。案分が大量に出る可能性が指摘されながら衆院選まで放置した。制度に問題があるのはもちろんだが、両党の責任も重いといえる。

 現在の立民は、旧立民と旧国民が合流して結成された。枝野幸男前代表は新党名に「立憲民主党」を提案。旧国民の出身議員らは「一度は政権に就き知名度がある」として党名に「民主党」を主張。枝野氏は「国民出身議員に配慮し」(同氏周辺)、略称を「民主党」にしたという。変更も検討されたが「すぐに変えれば党内に反発と亀裂を招く」(立民関係者)との懸念から進まなかった。

 合流を拒んだ旧国民の議員は新たな「国民民主党」を発足させた。略称は旧国民が2019年の参院選で使った「民主党」を継承。「もともと『民主党』を使っていたのはわれわれだ」(党幹部)と変更の議論は低調だった。

 国は全国の「民主党」票数を発表していない。比例九州ブロックと同じ有効投票数の5・7%と仮定すれば約320万票に上り、3議席を得たれいわ新選組を上回る。「過去にない規模の案分だ」と九州の選挙管理委員会の担当者は話す。 (川口安子、湯之前八州)

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