個人情報「共同利用」どこまでOK? 九電がグループ間共有を告知

 「個人情報を勝手に流用するのはいかがなものか」。電力会社からグループ会社間で個人情報を共有すると告知された福岡県内の複数の契約者から、西日本新聞「あなたの特命取材班」(あな特)に、こんな声が寄せられた。電力会社は11月からグループ会社間で個人情報を共有し、まずはインターネット接続事業者が割引を行う際に使うという。企業側は「ルール通り行っている」と強調するが、「どこまで利用範囲が拡大されるのか」と、心配する声が上がっている。 (水山真人)

 「お客さまの個人情報を必要な範囲に限定して、グループ会社と共同利用させていただきます」

 投稿者が契約している九州電力(福岡市)のウェブサイトを開くと、こんな告知が表示されたという。同社は11月から全グループ企業間で個人情報の共同利用を開始した。グループ企業は43社あり、不動産業や介護サービス事業など多岐にわたる。

 これまで同社は共同利用はエネルギー事業に限ってきた。11月からグループの接続事業者「QTnet」との共同利用を開始。インターネット光回線を契約する際、電力利用者に割引を適用するため、九電の顧客情報にアクセスできるようにした。

目的は一貫したサービスの提供

 法的には問題がないのだろうか?

 2005年に全面施行された個人情報保護法は「本人の同意なく、個人データを第三者に提供してはならない」との原則を定める。

 一方、共同利用は「経済活動の円滑化」を理由とした例外規定。本人の同意は不要だが、利用目的などを事前公表する必要がある。規定では顧客に一貫したサービスを提供するため、グループ企業に限らず、関連する事業者間で情報共有できる。例えばツアー旅行の場合、航空券や宿泊場所、現地のガイドの手配などに関わる複数の企業が情報を共有できる。

 九電は、氏名、住所、生年月日、電話番号、世帯人数などの個人情報を「グループ各企業」で共同利用すると告知し、利用目的は「各種商品・サービスの案内、各種調査・データ分析」などと幅広く列挙している。九電は運用前に顧問弁護士と協議し、「法令に合致していることを確認した」としている。

異業種間なら「法の趣旨逸脱も」

 共同利用の範囲については立法段階から議論があった。個人情報保護法案を審議していた03年の衆議院の特別委員会では「グループ会社であれば、広範に目的外使用される恐れがある」との指摘が出た。細田博之IT担当相(当時)は「(金融事業で得た)個人情報を物品販売など関連性がない範囲に利用することは許されず、本人の同意が必要だ」との見解を示していた。

 個人情報保護に詳しい若杉朗仁(あきひと)弁護士(福岡県弁護士会)は「共同利用は、利用目的が一致しているからこそ許される。九電のような(電力と通信という)異業種間の共同利用は、法の趣旨を逸脱する可能性がある」と話す。

 九電によると、共同利用停止の申し込みは約10件に上るという。田中敦弁護士(大阪弁護士会)は「企業は法的な義務を果たすだけでなく、不信感を持たれないよう運用の透明性を高めることが望まれる。個人情報が集まる公益企業は一般企業よりも慎重な対応が必要だ」と指摘している。 

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