あの日の春秋:「ゆでガエル」にはならぬよう(2014年12月6日)

突沸(とっぷつ)に注意をと国民生活センターが呼び掛けている。飲み物などを加熱した際、急激に沸騰して中身が飛び散る現象をいう。やけどの被害などが増えているそうだ▼液体が加熱され沸点に達すると、ブクブクと泡が出始める。だが、電子レンジで静かに加熱した場合などは、液体が対流せずに沸点になっても沸騰しないことがある。この「過加熱」の状態で、振動や調味料を入れるなどの刺激を与えると突沸が起きやすい▼防止のため①電子レンジで温め過ぎない②温め過ぎたら1分程度冷ましてから外に出す③ガスこんろでみそ汁などを温め直すときは、かき混ぜながら―などに気を付けたい▼米国で暴動やデモが相次いでいる。丸腰の黒人青年を射殺した白人警察官が不起訴になった裁判がきっかけだ。住民らの反発の背景に根深い黒人差別がある▼理不尽な社会への怒りが「過加熱」状態となり、不起訴という刺激で爆発したのだろう。対流しない水のように対話や交流のない社会は突沸の危険をはらむ。常に弱者の声に耳を傾け、社会を「かき混ぜる」努力が必要だ▼日本でも格差が広がり貧困層が拡大している。苦労して子どもを育てている一人親家庭。低賃金で働く非正規の若者たち。突沸寸前かもしれない。衆院選で暮らしを温める議論はなされているか。生ぬるいまま、電子レンジならぬ投票箱が「チン」と閉まって終わり、では意味がない。(2014年12月6日)

 特別論説委員から 格差が広がりつつある、と書いてから7年。株高・円安政策で大企業や富裕層は潤う一方、平均賃金は横ばい。各国に水をあけられ、先進国最低水準とも。さらに新型コロナが追い打ち。格差にあえぎ、怒る人たちが突沸しそうなものだが、大規模なデモはなく、選挙の投票率も低迷。おとなしいのか、諦めているのか、とりあえず生活できるからまあいいや思っているのか。それでも、さまざまな機会を捉えて声を上げなければ。水温が少しずつ上がっても逃げ出すタイミングを失って死んでしまう「ゆでガエル」にならぬよう。(2021年12月5日)

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