軽石大量漂着 海底火山への警戒さらに

 海底火山による自然災害をどこまで想定していただろうか。離島の多い九州には深刻な脅威だと認識を新たにしたい。

 首都圏のはるか南約千キロにある小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場(ふくとくおかのば)」が噴火したのは8月半ばのことだ。その際発生したとみられる軽石が太平洋上を今も漂流し続けている。沖縄、鹿児島県の島々のほか約2千キロ離れたフィリピン北部の島にも大量に漂着した。

 明治以降の海底火山の噴火では国内最大規模といい、軽石などの噴出物の量は1億~5億立方メートルに達するとみられる。

 軽石が漂着した地域の漁業や観光業に深刻な被害をもたらしている。生活物資を定期船で運ぶ多くの離島にも影響が出ている。沖縄県では各地で漁に出られないほか、ホテルのビーチも軽石に覆われた。米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設工事も一時中断した。

 鹿児島県の与論島ではタンカーが接岸できず、発電用重油の供給が滞った。東京都は伊豆諸島の港の入り口にオイルフェンスを設置した。船舶の出入りができなくなるなど二次被害も出ている。

 専門家によれば、フィリピン北部の軽石が黒潮に乗ると、1カ月ほどで九州に漂着する恐れがある。軽石はガラス質で割れやすい上、海水で急速に冷却されるため表面と内部の温度差で壊れやすい。漂流中に沈まなければ海岸に流れ着く。

 福徳岡ノ場は1986年にも噴火したが、今回の軽石の量は桁違いに多いという。どこに、どれだけの量が漂着するかは、潮の満ち引きや風に左右され、正確な予測は難しい。引き続き情報収集に努めたい。

 政府は港湾の除去作業は災害復旧事業を適用し、砂浜や海岸では環境省の事業を活用して、それぞれ財政支援に当たるという。国土交通省は民間の回収技術も募っている。

 ただ被害や影響は多くの省庁の所管にまたがっているため、政府の対応も迅速だったとは言い難い。関係自治体と協力し、支援を加速させてほしい。

 日本には111の活火山がある。気象庁などによると、海底火山はこのうち九つを数え、大半は福徳岡ノ場を含む小笠原諸島沿いにある。九州も鹿児島県と沖縄県の近海に存在する。

 噴火による爆風が海上を走り船舶が遭難した例もある。普段は気付かない火山だけに、警戒がおろそかになっていないか。火山活動の監視を強めたい。

 長崎、鹿児島両県にはそれぞれ971、605の島がある。全国で1、2位の数だ。離島の「生命線」が絶たれるような事態は避けなければならない。

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