中国ラオス鉄道開通 「一帯一路」の光と影、「債務のわな」懸念

 【バンコク川合秀紀、北京・坂本信博】ラオスと中国を直結する初の国際鉄道が3日、開通した。ラオス初の本格的な鉄道で、旅客と貨物両面で中国との交流拡大を図る。

 ラオスの首都ビエンチャンから中国国境に近いボーテンまで縦断し、国境を越えて中国雲南省の省都・昆明まで最高時速160キロで結ぶ。総延長は千キロ超。車で1~2日必要だったビエンチャン-ボーテン間は約3時間に短縮され、ビエンチャン-昆明間は7~8時間前後で結ばれる。

 2016年着工したラオス国内の総事業費は約60億ドル(約6800億円)。中国が全面支援し、7割は中国政府や中国企業が負担。残る3割を負担するラオス政府分も大半が中国側の融資で賄われる。

中国、資金と技術丸抱え 採算性低く

 ラオスと中国雲南省・昆明を直結する総延長約千キロの国際鉄道が3日開通した。「陸の孤島」からの脱却を目指すラオスと、巨大経済圏構想「一帯一路」の東南アジア展開を狙う中国。双方の利害が一致した「ドッキング・プロジェクト」(ラオス国営紙)と銘打つが、実質は資金と技術の大半が中国頼み。採算性の低さと債務負担の増大という課題が早くも小国にのしかかっている。 (バンコク川合秀紀、北京・坂本信博)

 ラオスの首都ビエンチャンの新駅ホームで3日午後、開通式典を開催。習近平国家主席とトンルン国家主席がともにオンラインで出席する力の入れようだった。

 一般の利用は4日から。当面は新型コロナウイルス対策として国境越えの乗り入れはなく、国内を1日2往復するのみ。このため期待していた中国人客の大量利用は見込めない。貨物は「旅客より早く越境輸送を始める可能性がある」(外交筋)が、これも限定的とみられる。

 他の途上国では既に、中国の融資で建設したインフラが不採算のため債務返済できず、中国の手に渡る例が相次ぐ。いわゆる「債務のわな」への懸念だ。

 総事業費は国内総生産(GDP)の約3割に当たる約60億ドル(約6800億円)と巨額。ただ事業会社として中国、ラオス双方が出資する特別目的会社が中国側の融資を受ける形のため、ラオス政府高官は7月、国営紙ビエンチャン・タイムズへの寄稿で政府の直接債務は少ないと強調。「専門家が懸念する『債務のわな』はない」と主張した。

 一方、高官は「直接の鉄道収益は低い」と認めた上で「事業会社に過半出資する中国政府が危機に陥らせないはずだ」と中国を当てにする姿勢を示している。昨年、国債が投機的ランクに格下げされ、既に債務返済に苦しんでいるラオス。外交筋は「鉄道はもう中国のインフラになっていると言っていい」と漏らす。

   ■    ■

 1990年代、ラオスの要請に応じて、鉄道建設の支援を決めたとされる中国。採算性に乏しい小国との鉄道建設になぜ、踏み切ったのか。

 中国にとって、米海軍が強い影響力を持つマラッカ海峡などを使わず、インド太平洋から中国へ資源や物資を運び込めるようにするのが大きな目的とされる。以前から中国からラオス、タイ、マレーシア、シンガポールを鉄道で結ぶ構想を習主席が提唱する「一帯一路」の一つとして打ち出しており、ラオス中国鉄道開通はその第一歩となる。

 中国外務省の汪文斌副報道局長は1日の定例会見で「一帯一路の重要プロジェクトであり、ラオスの人々の悲願だ」と強調。中国メディアは3日、「ラオス、さらには東南アジア諸国の繁栄と幸福の道を築くもので、近隣諸国の利益のための一帯一路構想の縮図だ」と報じた。

 ただ、一帯一路による中国の影響力拡大を懸念する声は周辺国に広がる。タイも中国の技術協力で高速鉄道を建設する計画だが、遅延を繰り返している。こうした警戒感の広がりを意識してか、中国メディア関係者は「一帯一路戦略という言葉は報道禁止語に指定されており、一帯一路構想と表現しなければならない」と明かす。

関連記事

PR

PR