人権週間 反差別の「原点」見つめて

 いわれなき部落差別と闘うため、全国水平社が創立されて来年100年となる。明治政府が出した身分の解放令に実効性は乏しく、不条理は変わらず重くのしかかっていた。

 <「解放令」よ お前は大地に春を呼ぶ希望の光か それともまやかしの妖光(ようこう)なのか>(水平社博物館の解説文より)

 人は「水平」であるべきだとの彼ら被差別者の叫びは、日本の人権運動の原点に当たる。今日まで、在日コリアン、障害者、女性などさまざまな反差別運動に大きな影響を与えてきた。

 今年も人権週間(4~10日)が始まった。第2次世界大戦で多くの命や人権が損なわれた反省から、国連が世界人権宣言を採択した1948年12月10日を記念し、日本政府が翌年、独自に設けたものだ。

 人権思想は今や個人の尊厳を重視し、「私」や「あなた」一人一人を認め合う大きな潮流になったと言えるだろう。

 水平社の理念と運動は現在の部落解放同盟に引き継がれた。行政や教育機関、メディア、企業など各界と力を合わせて教育啓発を進め「人権の世紀」と呼ばれる21世紀を迎えた。

 ただそこに、大きな落とし穴もあった。インターネットによる被差別部落(同和地区)出身者への差別言動の拡散である。無知に基づく偏見は解消されていないことが露呈し、新たな結婚差別などを生んでいる。

 全国の同和地区の地名リストをネット上や出版物に掲載した出版社代表らに、東京地裁が9月、リストの削除と原告(解放同盟)への損害賠償を命じた判決は記憶に新しい。1970年代に地名リストを企業に売り付けた「部落地名総鑑事件」をほうふつさせる。教育啓発に限界があったと言わざるを得ない。

 同和地区の出身者以外でも、ネット上で何の落ち度もない人々をおとしめる誹謗(ひぼう)中傷が飛び交っている現実を重く受け止める必要がある。

 法務省が昨年、新たに救済手続きを開始した人権侵犯事件は9580件余と減少傾向にある一方、人権侵害情報としてネット事業者に削除要請したのは570件余と過去最多を数えた。

 今年は東京五輪・パラリンピックを通じて、多くの選手が性的少数者(LGBTQなど)であることを公表し、大きな関心を呼んだ。体と心の性が一致しなかったり、同性を好きになったりする人たちの多くは差別を恐れ自分を押し殺してきた。ジェンダー(社会的性差)平等の思想も確実に広がっている。

 数十年前までは考えられなかった動きだろう。小さな声を集めて運動に育て、多様な「個」を認める社会を築きたい。

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