石油備蓄放出に九州備え、4カ所で全国の4割 入札、通関手続き見据え

 原油価格の高騰を巡って産油国と消費国のせめぎ合いが続いている。日本政府は米国や英国、インドなどと足並みをそろえて、価格抑制を目的に石油の国家備蓄の一部を初めて放出する方針。産油国側も増産要求に応じない姿勢を保っているものの、新型コロナウイルスなど不安定な要素に加え、脱炭素化の流れもあり、先行きは見通せない。各地の備蓄基地は本年度中とされる放出に向けて準備を進めている。 (小林稔子)

 全国10カ所の備蓄基地のうち、九州にある4カ所の備蓄能力は全体の41・8%。地震や津波など自然災害を考慮して各地に点在する。

 国内初の「むつ小川原国家石油備蓄基地」は1985年9月、青森県六ケ所村に完成。88年9月には長崎県新上五島町に世界初の洋上浮体式の上五島備蓄基地が建設された。地上設備が少ない分、開発は小規模で済む。全国的に用地の確保は難航したとみられる。

 海外からタンカーで運ばれる原油は、通関手続きを経ないまま基地に蓄えられる。前例のない放出に当たり、まずは油種と量を特定した上で元売り業者などが参加する入札が行われる見通し。上五島の担当者は「どの基地が放出の対象になるか分からないが、緊急放出の準備は常に整えている」と話す。改めてタンカーに移し替え、搬送する。落札したのが国内の業者であれば、数年単位で貯蔵している石油の正式な輸入手続きも必要になる。

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 国家備蓄の起源は73年のオイルショックにさかのぼる。中東戦争をきっかけに、産油国が価格の引き上げや一部の国への禁輸を決定。石油製品が高騰し、トイレットペーパーや洗剤の買い占めが起きるなど社会は混乱した。

 石油は精製され、自動車のガソリンや火力発電所の燃料の重油などになるほか、プラスチック製品や化学繊維の衣服にも活用される。

 石油資源がほとんどない日本にとって「安定供給は欠かせない」(資源エネルギー庁)。75年に制定された石油備蓄法は石油を確保する手段として、国が所有する国家備蓄▽石油会社に義務付ける民間備蓄▽産油国のサウジアラビアなどと連携する産油国共同備蓄―の三つを規定。九州の民間施設では、鹿児島県の錦江湾に、735万キロリットルの備蓄能力を持つENEOS喜入基地(鹿児島市)がある。

 今年9月末時点で、国家備蓄145日分、民間備蓄90日分、共同備蓄6日分が確保されている。

 今回の放出量は国内需要の数日分に相当する400万バレル程度で検討中とされる。緊急時に限る国家備蓄の放出を、価格抑制の目的で実施する異例の判断。ただ、各国が“微量”を出し合ったところで、市場への直接的な影響は小さい。第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは「アメリカが放出を各国に要請したと報道された時点で、国際的な原油の先物価格が一時下落した。その時に効果は出尽くした」と分析する。

 石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の産油国でつくる「OPECプラス」は今月2日、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の出現による石油の需要減を警戒しながらも、産出計画を下方修正しなかった。石油備蓄の放出に動いた消費国との融和を図った、との見方もある。

原油高影響広く 久留米のいちご農家「暖房の経費2倍に」

 原油価格の高騰は物流や各種資材にも響き、あらゆる分野が影響を受ける。福岡県久留米市のいちご農家三浦孝一さん(56)もその一人。所有する約2000平方メートルのビニールハウスで11月に暖房を使い始めた。燃料の重油は昨年に比べ、1リットル当たり30円高い。旬の春だけでなく、年中食べられるのは、冬にハウス内を5度より低くならないよう暖めているからだ。

 昨年は約5000リットルの重油で十分だったが、今年は冷え込みが予想される。「暖房にかかる経費だけでも今年は倍になると思う」。仲間内の会話では設定温度を尋ね合う。1度下げればそれだけ燃料費が浮く。ただその場合、実や株に影響が出る恐れがある。

 段ボールや詰め合わせ用のテープの値上がりも気掛かりという三浦さん。「工夫して燃料の消費を抑えないといけない」

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