「チーム岸田には調整役がいない」賃上げ税制でも露呈した“勇み足”

 6日の所信表明演説で、新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」対策を強調するとともに、来夏の参院選も見据え、「成長と分配」の訴えにも力を傾注した岸田文雄首相。ただ、「賃上げ税制」の表現ぶりでは与党との調整不足により、直前に内容が変更される一幕も。前回10月の演説では淡泊だった憲法改正の言及に、今回は倍の約200文字を費やす変化も見られた。 

 ≪遠きに行くには、必ず邇(ちか)きよりす≫

 34分前後にわたった演説の冒頭、首相は儒教経典「礼記」の一節を引用し、「大きく物事を進めていく際には、順番が大切です」と自身の政権運営に結び付けて語った。2021年度補正予算案に裏付けられた55兆7千億円の経済対策について、「新型コロナを克服し、新時代を開拓するため」と位置付け、「岸田カラー」の具体化を誇ってみせた。

 実は、思わぬ勇み足もあった。この日朝の臨時閣議に提出された演説完成稿から、原案段階で存在した賃上げ税制の税率が丸々、削られていたのだ。

 「分配」を強化するすべとして、民間企業が従業員の給与を引き上げる動機づけにと、法人税額から控除できる税率を明示するはずだった。国民の目に見える成果を急ごうとしたとみられるものの、官邸幹部によると、与党の税制調査会が議論の最中であるとして公明党側から難色が示され、最後は首相が「数字はやめておこう」と引き取って指示を発したという。

 2日には、オミクロン株を食い止める水際対策の先手対応が、結果的に裏目に出たばかり。「『チーム岸田』と言われるが、官邸には調整役がいない」(外務省幹部)と先行きを案じる声もある。

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 一方で、報道各社の世論調査結果を見ると、内閣支持率は6割を上回るような水準で堅調。「首相のようなタイプは派手さはないが、じわじわと支持が浸透していく」(周辺)。官邸に漂うそんな強気のムードが、特に演説の憲法改正のくだりから立ち上る。

 首相は「国民理解のさらなる深化が大事」と前置きした上で、「現行憲法が今の時代にふさわしいもので在り続けているかどうか、国会議員が広く国民の議論を喚起していこうではありませんか」と明らかに一歩、アクセルを踏んだ。衆院選で改憲勢力日本維新の会が躍進、前向きな姿勢の国民民主党も議席を増やした。こうした政治環境も前提条件に、6日、注意深く耳を傾けた自民党岸田派の幹部は「首相は憲法改正に本気だ」。その胸の内を、政権のレガシー(政治的遺産)に、と代弁した。

 演説のように、≪遠きに行く≫ために必要な時間軸を確保するには、参院選で一定の結果を出し、中長期政権の道を開くほかない。対コロナを筆頭に、首相の前に越えるべき多くのハードルが待ち受けている。

 (古川幸太郎、井崎圭)

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