流水型ダム整備方針、国が五木村と相良村に説明 川辺川

 昨年7月の熊本豪雨で氾濫した熊本県南部の球磨川流域の治水策として、国土交通省九州地方整備局は7日、最大支流川辺川に計画する流水型ダムについて、2009年に国が中止した旧川辺川ダム計画の予定地に旧計画と同規模で整備する方針を正式に発表した。完成すれば国内最大の治水専用ダムとなる。

 蒲島郁夫知事と九地整の藤巻浩之局長が同日、水没予定地がある同県五木村と、建設予定地の同県相良村で両村長らにダムの位置や規模を初めて説明した。13日に学識者に示し、議論を本格化させる。

 新ダムは旧計画予定地の相良村四浦の峡谷に建設し、高さ107・5メートル、幅約300メートル。構造は「アーチ式」からダム本体の重さで水圧を受け止める「重力式」に変更した。

 総貯水容量は約1億3千万トン、湛水(たんすい)面積は3・91平方キロで旧計画と同規模。旧計画は、常に水をためて利水も行う貯留型だったが、新ダムは治水専用のため洪水調節能力は上がる。蒲島知事から「命と環境の両立」を要望され、環境への配慮から平時はゲートを開放して水を流す。大きな洪水時にはゲートを閉めて貯水するため、旧計画同様に五木村の一部は水没する可能性がある。

 両村は説明を受け、環境保全や村の振興策の拡充を要望。藤巻局長は「国、県が連携して取り組む」とし、蒲島知事は「流水型ダムを前提とした村の新しい振興の方向性を示し、不退転の決意で取り組む」として理解を求めた。 (古川努、中村太郎)

 地盤や地形、限られる適地

 国土交通省は、熊本県相良村の旧川辺川ダムの計画地を、再びダム建設地に選んだ。激甚化する水害を抑えるには規模の大きなダムが不可欠な一方、適地が限られている事情がある。

 昨年7月の熊本豪雨で氾濫した球磨川では、あらゆる水害対策を組み合わせた「流域治水」が進められている。流水型ダムは特に有効とされ、流域面積が大きい支流の川辺川でも効率的に洪水を調整できる。

 国交省が熊本豪雨における同県人吉市付近の最大流量毎秒7400トンを基に水害対策の効果を試算したところ、旧川辺川ダムと同規模の流水型ダムでは最大流量は同2600トン減少した。一方、同じ球磨川水系にある県営市房ダムの再開発は同200トン、遊水地は同300トンにとどまった。

 ただ、こうした水害対策を完了したとしても、熊本豪雨級の洪水が再び発生すれば、球磨川流域で計約60キロにわたって堤防が決壊する恐れがあると想定される。国交省関係者は「ただでさえ厳しい状況。リスクをできるだけ低くするために、一定規模の大きなダムが必要だ」と断言する。

 普段は水をためない流水型ダムはコンクリートのダム本体の重さで安定させる「重力式」で、強固な地盤が必要となる。相良村では旧川辺川ダムのボーリング調査で既に安全性を確認済みで、峡谷に囲まれており地形的条件にも恵まれている。国交省幹部は「ダム建設にはさまざまな条件がある。適地は限られている」と語る。 (御厨尚陽)

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