首相公邸に9年ぶりの“主”…岸田氏が引っ越しを決めたワケ

【東京ウオッチ】

 岸田文雄首相は11日から、官邸に隣接する首相公邸に入居する。10月に就任して以降も、官邸から約400メートルの地点にある東京・赤坂の衆院議員宿舎から通勤してきたが、「職住一体」に変更することとした。首相が公邸で暮らすのは、旧民主党政権の野田佳彦氏以来、9年ぶりという。

 現在の公邸は旧首相官邸を曳家(ひきや)・改築したもので、2005年から供用開始された。入居するかしないかの判断は時の宰相に任されているが、入居しなくともその維持管理には年間約1億6千万円を要するとされる。このため、入居しないと「血税が無駄になる」との批判や、「首都直下地震が起きた場合など、危機管理事態にトップが即時対応できない」との指摘も聞かれる。

 では、近年の自民党政権のケースを確認してみよう。

 小泉純一郎、第1次政権の安倍晋三、福田康夫、麻生太郎の各氏は、公邸の主となった。一方、第2次政権の安倍氏は東京・富ケ谷の自宅から、続く菅義偉氏も議員宿舎から官邸に通う方を選んでいる。

 公邸に入らなかったのは、安倍氏は「自宅の方が、心身の休養、充電ができる」との理由だったとみられている。政官民の知人と個別面会して直接、情報収集するスタイルだった菅氏の場合は、いったん中に入ってしまえば、公邸よりも動静をメディアに把握されづらい議員宿舎を好んだとされている。

 さて、岸田氏-。

 政府関係者は「首相は、就任当初から公邸への引っ越しを検討してきた。危機管理面などを総合的に判断した結果だ」と話す。議員宿舎が赤坂の繁華街に近く、多くの出入りがあることから、警備を担当する警察官の負担が重くなってしまう事情も考慮したもよう。土曜日の11日には引っ越しを終える予定で、議員宿舎には息子らと一緒に暮らしていたが、今後どうするかはまだ分からない。

(首相官邸ホームページより)

 ちなみに公邸は鉄筋4階建ての洋館で、延べ床面積は7千平方メートル。部屋数などは非公表だが、大ホールを備え、海外要人をもてなす機能も有する。直近では、来日したベトナムのファム・ミン・チン首相の一行を歓迎する夕食会が催された。

 旧官邸時代には、1932年の五・一五事件で犬養毅首相が、36年の二・二六事件では岡田啓介首相の義弟が殺害された歴史上の舞台となった。(井崎圭)

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