想定超える感染再拡大…復活期す韓国観光に暗雲 コロナ後の戦略は

 韓国の観光復活に向けた動きが不透明感を増している。文在寅(ムン・ジェイン)政権が11月から感染予防と経済活動の両立を目指す「ウィズコロナ」路線にかじを切り、観光誘客の機運が高まったが、その後、韓国国内で感染者が急増。新変異株「オミクロン株」も広がり、日韓の自由な往来再開は見通しが立たない。(釜山・具志堅聡)

「行きたい気持ちを高めたい」

 釜山市で人気を集めている観光スポットの一つ、影島(ヨンド)。10月下旬、市内に住む田中文乃さん(25)=福岡市出身=が海に面した「カフェ38・5」で飲み物やケーキを撮影していた。「ソファでゆっくりできるテラス席があり、癒やしを感じられる。日本人観光客にも来てほしい」

 釜山市観光協会はコロナ禍で観光関係者やメディアを招くことが難しい中、釜山在住者の発信力に着目。現地に住む日本人に自由に旅行してもらい、会員制交流サイト(SNS)などの情報発信につなげる企画を実施した。田中さんも参加者の一人で、一番反響があったのは、海雲台(ヘウンデ)区の海岸沿いの上空を走る電車についての投稿という。「コロナ禍にオープンした新しい観光スポットに関心がある人が多い」と振り返った。

 今回、参加者47人が計約千枚の写真を投稿したという。協会の崔鎮鎬(チェ・ジンホ)代理は「コロナは永遠に続かない。事前に釜山に行きたい気持ちを高めたい」と話す。

 韓国観光公社福岡支社は11月、福岡空港で韓国気分を味わえるイベント「Touch the K.」を開催。コロナ禍に人気を集めた韓国ドラマ「梨泰院(イテウォン)クラス」の舞台になったソウル市・梨泰院の街並みを再現し、チヂミなどのご当地グルメも提供した。2日間で5千人以上が訪れたという。福岡市の商業施設に韓国情報を発信するスペースを設け、オンラインツアーの動画配信にも取り組む。

 こうした取り組みに冷や水を浴びせたのが韓国の感染拡大だ。文政権はワクチン接種が進んだことを受け、11月1日に首都圏で午後10時までとしていた飲食店の営業時間制限をなくすなど、コロナ関連の規制緩和に踏み切った。しかし、その後感染が急拡大。当初の新規感染者数は2千人前後だったが、12月には7千人を超えて過去最多を更新。重症者、死者も最多を更新し続けている。

 緩和当初に政府が「1日当たりの感染者は5千人になる可能性がある」と表明するなど、感染増加は織り込み済みだった。想定外だったのはワクチン接種者が感染する「ブレークスルー感染」の多発だ。首都圏では病床不足が深刻化しており、金富謙(キム・ブギョム)首相が在宅治療の支援強化を発表した。

 オミクロン株の感染者も急増しており、市中感染の拡大に懸念が高まっている。観光関係者からは「国内の状況が良くなり、これから訪韓客がどんどん増えると思ったらストップした」と恨み節が漏れる。

オミクロン株で増す不透明感

 国際線の運航再開も不透明だ。韓国政府は段階的な地方の国際線再開を目指し、釜山市の金海国際空港では米グアム・サイパンが新たに運航先に追加されたが、感染状況次第で変更になる可能性があるという。

 現在、福岡空港で韓国路線を運航するのは2社のみ。アシアナ航空は12月から福岡-ソウル便を週2便に増やし、1月も運航する予定だが、韓光福(ハン・クァンボク)・福岡支店販売部長は「オミクロン株の流行で日本国内の感染も拡大した場合は運航便数に影響が出る可能性がある」と明かす。ジンエアーの山田祐介福岡旅客支店長は「水際対策の強化により搭乗人数は供給座席の3割程度まで。2月以降も週1便の運航を継続するが、予約状況次第となる」と語る。

 福岡-釜山間の運航再開もめどが立たない。エアプサンのコミュニケーション室の朴晋佑(パク・ジンウ)課長は「オミクロン株で需要の減少が見込まれ、運航再開の決定は困難」とする。博多-釜山の航路に就航できない状況が続く新型高速船「クイーンビートル」について、JR九州の広報担当は「11月にビジネス・留学目的の水際対策が緩和され観光再開に向けて一歩前進したと思っていたが、不透明感が続いている」と説明した。

 光が差した直後に再び暗雲が垂れ込めてきた観光業界。関係者はコロナ後を見据える。韓国旅行最大手ハナツアーの鄭琦潤(チョン・ギユン)広報室長は11月の観光学会イベントで「(米中枢同時テロの)9・11以降は意外にも家族旅行が増えた。国家的な大事故やパンデミックを経験すると、人々は未来より現在の幸せを追求するようになる。観光需要につながると予測される」と述べた。

 慶尚北道の李喆雨(イ・チョルウ)知事はポストコロナ時代の観光は心を癒やすヒーリングが重要と強調。「慶尚北道には静かに休みながら観光できる地域がたくさんあり、競争力が十分にある」と述べ、世界文化遺産の河回村(ハフェマウル)がある安東市などの売り込みに力を入れる構えだ。

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