聞く力はもろ刃の剣…岸田流「官邸主導」探る 第6波対策が試金石

 岸田文雄政権の意思決定が、安倍、菅両政権とは異なる官邸主導に変化しつつある。首相への忠誠心が厚い官邸官僚が政策の方向性を決めていたスタイルから一転。首相は側近に加え、霞が関や与党の主張も反映するボトムアップ型を重視する。だが「官邸1強」からの脱却が司令塔不在の混乱を招いたケースもあり、2022年は政策遂行でぶれない「チーム岸田」を築けるかが問われている。 

 「トップダウンかボトムアップか、どちらかを優先するのではなく、必要なときに、必要な手法を使い分けることが賢い政治だ」

 4日、三重県伊勢市での年頭記者会見で政治姿勢について問われた首相は、こう言い切った。

 安倍晋三元首相による全国の小中高校などへの一斉休校要請(20年)や、菅義偉前首相が打ち出したワクチン「1日100万回接種」(21年)。両政権では新型コロナウイルス対策に限らず、重要事項はトップダウンで決まった。首相補佐官が官邸の意向をかざし、多省庁にまたがる政策を推し進めた半面、霞が関の離反を招くこともあった。

 こうした政治手法を反面教師に、首相は、18歳以下への10万円相当給付では周囲の進言に耳を傾けたり、保管費約6億円が判明した布製「アベノマスク」は自ら廃棄を決断したりしてきた。

 その岸田官邸を支えているのが8人の首相秘書官だ。元経済産業事務次官の嶋田隆氏を筆頭に、将来の次官候補ら各省庁のエース級が固める。岸田派の木原誠二官房副長官が最側近として政策全般に目配りし、首相は、松野博一官房長官や副長官とは平日ほぼ毎日、会議を開いて問題意識を共有。秘書官を派遣していない省庁の幹部とも意見交換を重ねる。首相側近は「霞が関は人事で縛るのではなく、理屈で納得させるのが大事だ」と明かす。

 だが新変異株「オミクロン株」の感染拡大を受け、ほころびも目立ち始めた。昨年末には文部科学省が国公私立大の個別入試に関し、同株感染者の濃厚接触者の受験を認めないという方針を3日で撤回。日本に到着する国際線の新規予約受け付けを国土交通省が停止要請したことと同様、官邸と事前の擦り合わせがなかった。首相は周囲に「(霞が関は)岸田政権をなめているのか」と珍しくいら立ちを見せたという。

 同株の市中感染は全国に広がっており、「第6波」が現実味を帯びる。首相はこの日の会見で「柔軟に対応することはちゅうちょしない」と強調した。だが、首相の聞く力による方針転換が常態化すれば、「朝令暮改」「生煮え」との批判が高まるリスクをはらむ。

 これまでも感染状況は内閣支持率と連動し、対策の迷走が政権の体力を奪った。首相が目指す「最悪の事態」を想定した危機管理を発揮するためにも、官邸と省庁との連携を強化できるかが政権の消長を占う。 (古川幸太郎、井崎圭)

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