ゼロコロナ優先し死産や患者死亡…「西安の悲劇」SNSで非難拡散

 【北京・坂本信博】新型コロナウイルスの感染が拡大しロックダウン(都市封鎖)が半月以上続く中国の陝西省西安市で、防疫対策を理由に病院が診療を拒んで妊婦が死産したり、患者が死亡したりする事態が発生している。会員制交流サイト(SNS)には「コロナによる死者はほとんどいないが、コロナ対策で何人も死者が出ている」などの投稿が相次ぎ、習近平指導部の「ゼロコロナ」政策を疑問視する声も出ている。

 北京冬季五輪開幕を2月4日に控えて中国当局が厳しい防疫態勢を敷く中、西安市では昨年12月上旬から新型コロナが再流行。感染者数は日本や欧米よりはるかに少ないが、当局は同下旬から住民約1300万人に自宅待機を求めて移動を制限する措置を始めた。

 悲劇が起きたのは今月1日。中国メディアなどによると、妊娠8カ月の女性が腹痛を訴えて西安市内の病院に運ばれたが、PCR検査の陰性証明の有効期限が4時間前に切れていたことを理由に、氷点下の屋外で約2時間待たされ、大量出血して死産した。妊婦の親族が当時の映像をSNSに投稿すると、病院への非難が沸き上がった。

 2日には、心臓病を抱える男性がコロナ感染の「中リスク地域」の住民だったため複数の病院から治療を拒まれ、3日未明に死亡。これを香港メディアが報じ、中国のネット上で一気に拡散された。

 地元のフリー女性記者の江雪さんは4日、かつて長安と呼ばれた同市のロックダウン後の10日間余りを記録した文章「長安十日」をSNSで発表した。ゼロコロナ優先で硬直化した当局の対応によって物流が制限され、食料不足が発生。食べ物を買いに外出した若者が居住区の門の警備担当者に殴打されたことなどを伝えた。感染者が1人でも出れば居住区全員が隔離されるため、人々が恐怖を感じている実態も紹介した。

 江雪さんはこうした市内の状況を「本質的には人災だ」と指摘。「(当局は)われわれは勝利のために一切の代価を惜しまないというが、市民は『われわれ』の側か、それとも『代価』の側か」とつづった。

 2年前、湖北省武漢市が都市封鎖された際は、女性作家の方方さんが中国の暗部も含めて生活を記録した「武漢日記」が反響を呼んだ。江雪さんの文章は「西安版武漢日記」としてSNSで共感を呼んでいるが、当局に批判的な投稿は次々と削除されている。

 事態を重く見た市政府は6日、妊婦の死産を陳謝し、関係者の処分を発表した。孫春蘭副首相も「救急・重症患者は検査証明の有無にかかわらず、すぐに受け入れなければならない」と指示。市民の不満がこれ以上広がらないよう、当局は火消しに追われている。

関連記事

PR

PR