元鑑識の証言、転落の側溝「知らない」 #捜査員を訪ねて①

検証「大崎事件」 

 鹿児島県大崎町で43年前に男性の遺体が見つかった大崎事件で、殺人などの罪で服役した原口アヤ子さん(94)が裁判のやり直しを求める第4次再審請求は今春以降、鹿児島地裁の最終判断が出る見通しだ。被害者は本当にアヤ子さんと親族らによって殺害されたのか。それを探るため当時の捜査員たちを訪ねた。

「身内の犯行」ありきの捜査

 高台に造成された鹿児島市の住宅街。3度目の訪問でその元捜査員に会えた。事件当時は40歳の巡査部長。アヤ子さんの取り調べにも関わった。

 アヤ子さんの義弟の遺体が自宅牛小屋で発見されたのは1979年10月15日。鹿児島市の県警本部から殺人事件を担う捜査1課員たちが現地に派遣された。15人ほどが1カ月余り、志布志署の道場に泊まり込み、捜査に当たった。

 「現場を見ましたか? 3兄弟の家の配置を見れば、各戸の敷地を通らないと、遺体が見つかった牛小屋に行けないわけさ。周りを崖や竹やぶに囲まれているから、被害者に近い人たちの犯行じゃなかろうかと。そういうところから捜査したと思います」と元捜査員は振り返った。

 この説明には、既視感があった。同じく県警から応援派遣された別の捜査員が裁判資料の中で、事件発生当初の捜査方針をこう語っていた。「幹部から『同じ敷地に被害者と兄2人が住んでいる。その敷地内で遺体が発見されたのだから、家族が絡んでいるに違いない』と指示された」

 確かに現場は崖や竹やぶに囲まれ、近づきやすい場所ではない。とはいえ当時から近くに民家も多く、敷地内に夜間立ち入った犯人として、近親者のみに狙いを定めることは説得力を欠くように思う。現に事件が起きたとされる夜、路上に倒れた被害者を軽トラックで自宅に連れ帰った隣人2人が立ち入っているのだ。

 警察は見立て通り、アヤ子さんの夫と義弟から自白を引き出し、遺体発見の3日後に殺人と死体遺棄容疑で逮捕。だが2人には知的障害があり、その後、「自白を強要された」と供述を翻す。弁護団は95年の第1次再審請求から「被害者は殺されたのではなく、側溝転落に伴う事故の影響で死亡した。大崎事件は、遺体発見直後から殺人事件の見立てで突き進んだ、見込み捜査が生んだ冤罪(えんざい)」と主張してきた。

 確定判決が認めた殺人か、弁護団主張の事故死か。真実はどちらなのか。

 大崎事件 1979年10月、鹿児島県大崎町で男性=当時(42)=の遺体が自宅牛小屋で見つかった。県警は義姉の原口アヤ子さんと夫ら計4人を殺人や死体遺棄容疑で逮捕。全員の有罪が確定した。95年の第1次再審請求後、再審開始決定が3回出たが、いずれも上級審で取り消され、2020年3月に第4次請求した。

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