「前任に負けないインパクトを」首相、綱渡りの「3回目」前倒し

 13日、政府は爆発的に感染拡大している新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン株」の脅威を前に、一般の人と高齢者を対象にしたワクチン3回目接種のもう一段の前倒しを決めた。自衛隊による大規模接種会場の設置表明などに続き、岸田文雄首相は矢継ぎ早に対策を打ち出しているが、実際にワクチンを速やかに国民に行き渡らせることができるかは綱渡りだ。

 「3回目接種は、世界的に見ても重要だと認識している。しっかり取り組んでいきたい」。この日夕、官邸で後藤茂之厚生労働相らと面会してワクチン戦略を更新した首相は記者団に向かい、こう力を込めた。

 政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長が、「国の最優先課題」と明言する3回目接種。オミクロン株の発症予防に70~75%、重症化予防には85%の効果を発揮するとの英国の研究結果も存在する。東京都で新規感染者数が一気に3千人を突破し、ウイルスの新たな「波」が列島を覆っていく中、局面を転換できるワクチン普及には一刻の猶予さえ許されなくなった。

 昨年11月、政府は2回目接種から3回目接種には8カ月以上の間隔を空ける原則を決めた。その後、オミクロン株を受け、12月には高齢者施設の入所者や医療従事者の3回目接種の短縮を公表。だが、年末年始を挟んだ影響もあり、3回目接種は約104万回、全人口の0・8%にとどまっている(1月13日時点)。

 焦りに駆られた首相は、昨年に続き自衛隊による大規模接種センターの設置などを表明。周辺によると、防衛省はまん延防止等重点措置が適用されている沖縄県に医療人材を派遣中のため、センターに振り向けられるマンパワーが足りないと主張したが、首相が押し切ったという。さらに、間髪入れずこの日の接種前倒し決定となった。

 「『1日100万回接種』の大号令を掛けた菅義偉前首相に負けない、インパクトのあるメッセージを出そうとした」。政府関係者は、「先手」の演出効果を狙ったと明かす。

 時間との闘いになるが、一般の高齢者の3回目接種が本格化するのは2月以降となる見込み。政府はワクチンの確保状況なども踏まえ、接種の数値目標を出すことには後ろ向きだ。東京大の仲田泰祐准教授のチームの試算によると、1月末には東京都の1日当たり新規感染者は最悪の場合、2万人に達するとしている。

 (前田倫之、井崎圭)

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