皇位継承の安定 政府案は現実に即するか

 「持続可能な皇位継承制度」を設けるという問題の核心から目をそらす。そんな政府の判断と言わざるを得ない。これでは将来、男性皇族の減少による危機的な状況が再来することは避けられないのではないか。

 岸田文雄首相は、安定的な皇位継承に関する有識者会議が昨年末にまとめた答申をそのまま政府案として国会に報告した。最大の焦点だった「女性・女系」に皇位継承資格を広げるかどうかについては先送りした。

 現行憲法は皇位を「世襲」と規定し、法律である皇室典範は「皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と定める。

 女性天皇は過去に8人いる一方、母方が皇統を継ぐ女系天皇は例がない。例えば、天皇陛下の長女愛子さまが女性天皇となり、その長男が皇位につけば「女系男子の天皇」となる。

 政府案は、秋篠宮家の長男悠仁さままでの皇位継承順位を維持するとした上で、皇族数の確保策を示すにとどまる。具体的には、皇族女子を結婚後も皇室に残す案と、旧皇族の男系男子を養子縁組で皇籍に復帰させる案の2案だ。

 今回の有識者会議は上皇さまの退位特例法成立(2017年)に伴う国会付帯決議が起点である。政府に求められたのは「皇位の安定継承策」の速やかな検討と国会への報告だったはずだ。既に5年近くが過ぎた。政府の対応には、その意思がどこにあるのか見えにくい。

 小泉純一郎政権は05年に当時の有識者会議から、女性・女系いずれの天皇も認める答申を得た。今回の答申と正反対とも言える内容だったが、その後の悠仁さま誕生により、皇室典範改正は見送られた経緯がある。

 天皇制は日本の国柄の根幹をなし、その伝統を守るため、皇位継承者は「男系男子」に限るべきだとの意見がある。

 一方、共同通信の昨春の世論調査では80%以上が女性・女系天皇を容認した。男女平等の価値観が定着してきたこともあろうが、男系男子に固執するあまり皇位が途切れることへの懸念も拭えないのではないか。

 昨年結婚した秋篠宮家の長女眞子さんと同様、同家の次女佳子さまも、成人された愛子さまも、現行制度のまま結婚すれば皇室を離れることになる。

 皇族の個人としての考えや、その扱いを含め、これからの皇室はどうあるべきか。その姿を語らねば議論は深まらない。

 政府案を受け、来週からの通常国会で与野党協議が始まる。国権の最高機関としての存在意義が強く問われる。

 現在の象徴天皇制は「国民の総意」に基づく。現実に即した論議を展開してもらいたい。

関連記事

PR

開催中

新春掛軸展

  • 2022年1月20日(木) 〜 2022年1月26日(水)
  • ギャラリーやすこうち

PR