あぶさんと一緒に福岡を愛した水島新司さん【復刻記事】

あぶさん引退せず 漫画ヒーローも福岡へ 原作者・水島新司さん張り切る(1988年10月21日付西日本新聞)

バット一振りにかける球界一の酒好き男「あぶさん」は杉浦監督の慰留に「お供します」と承諾

 杉浦監督の「あぶさん」慰留交渉成功─福岡ダイエーホークスの誕生でその去就が注目されていた「あぶさん」こと景浦安武選手(41)が来季も福岡の地で現役生活を続けることを決意した。ホークスを代表する大物選手の残留決定に、九州のファンからは「次は門田さんが福岡行きを決意する番だ」との声が高まっている。

 「あぶさん」は小学館発行の漫画雑誌「ビッグコミックオリジナル」に大の南海ホークスファンの水島新司さんが連載しているマンガの主人公。同僚の門田より一歳年上で現役最年長。バット一振りにかける代打専門男という舞台設定となっている。球界一の酒好きで、バットに酒しぶきをかけてボックスに入り、アルコールの勢いで豪快なホームランを打ちまくるのを最大の魅力としているヒーローだ。

 最近は年齢からくる体力の衰えで、そろそろ引退か? とささやかれていた時期に、降ってわいたような球団売却。ファンは「これで引退を決意して連載も打ち切りか」と心配されていたが、ご安心めされ。最新号(福岡地区22日発売)では、そういう周囲の心配をよそに一杯飲み屋で杉浦監督が慰留交渉。「来年福岡に来てくれるね」との杉浦監督の言葉に「はいお供します」と承諾してしまうのだ。

 大好きな南海の身売りで一時ショックを受けていた水島さんだが今は「球団買収、本拠地移転の話題が描けるなんて私のマンガ人生にもめったにないチャンス」と目を輝かす。あぶさんが単身赴任するか、家族も引っ越すかは「門田選手の動向を見ながら検討中」だが「私も福岡に何度も足を運んで、福岡の風土と人情をどんどん描きたい」と水島さんは大張り切り。

 あぶさん 昭和四十八年に南海が優勝した年から連載開始され、以来十五年間にわたるロングセラー。単行本は四十巻を数え、計千五百万部が売られている。

1988年10月21日付西日本新聞


 

天神外伝・「あぶさん」作者水島新司さんの福岡論(1997年5月20日付西日本新聞)

●連載やめようか

 ホークスが大阪(南海)から福岡(ダイエー)に移ると決まったのは「あぶさん」連載十六年目の、一九八八年、まさに青天のへきれきでした。初めて公私混同して「連載やめようか」と思ったくらいです。でも、西鉄ライオンズを支えた福岡のファン気質にかけてみたいと思ったのと、福岡ダイエーホークスの行方を横目で見ながら連載を終わるのは「ものかきとしてもったいない」と思ったのです。

●四つの要素

 全く土地カンのない場所でしたけど、福岡を見に来て二日もすると、すぐ「福岡でお世話になろう(連載続けよう)」と思いました。
 福岡は「田舎都会」だと思うんです。僕の言う「都会」の要素は四つあって(1)地下鉄(2)大相撲の場所(3)プロ野球団(4)交響楽団―のどれが欠けてもダメ。福岡には全部そろってるんですよ。この都会の要素に加えて海あり、山あり。しかも、人がいい。大阪人は結構、私利私欲が強いんですけど、福岡の人ってがめつくない。こういう土地だから、ホークスを温かく迎えたんじゃないですかね。

 福岡にとっても、球団を誘致してドーム球場ができたことは、プラスですよね。今でこそ、大阪や名古屋にもドームできましたけど、日本で二番目のドーム球場だったんですから、マイケル・ジャクソンなど海外の大物も来ましたよね。球団の本拠地が、文化の拠点にもなったんですよ。

●親不孝のままで

 ドームや福岡の街並みは、取材してかいてます。でも、中洲のスナックは架空の店だよ。実在する店をかくと、本当にホークスの選手が行くと思って、お客さんが殺到すると困りますからね。

 「親不孝通り」の名前を変えるとか、最近聞いたんですけど、あれ本当? 変えちゃいかんですよ。「くいだおれ」と聞くと「大阪やなあ」と思うように「親不孝通り」と言えば福岡ですよ。名前の由来を、予備校があるから「親不孝」と聞いたんですが、一生懸命予備校行って、上の学校めざしてるんだから、むしろ親孝行ですよ。それを「親不孝」と名付けるところが福岡らしくて、いいネーミングじゃないですか。通りの名前を変えないよう、あぶさんにも一肌脱がせましょうかね。

 それにしてもホークスは、長くファンを裏切ってますよ。今年こそは、優勝して、いや、悪くても優勝争いには絡んで、ファンの期待にこたえなきゃ。

1997年5月20日付西日本新聞から

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