南海トラフはいつか来る 「臨時情報」仕組み理解を 大分・宮崎地震1週間

 「いよいよ来たのか」-。未明の大きな揺れに多くの人が震えた。大分、宮崎両県で最大震度5強を観測した22日の地震で、南海トラフ巨大地震が改めて注目されている。気象庁は巨大地震の可能性が高まった際に「南海トラフ地震臨時情報」を発表するが、周知や備えは十分とは言えない。今回の地震は関連性は低いとみられるものの、専門家は臨時情報の仕組みを知るなど備えの強化を呼び掛ける。 (梅沢平)

 22日午前1時すぎの地震直後。会員制交流サイト(SNS)では「前兆かもしれない」などと巨大地震を恐れる投稿が相次いだ。冬の暗い時間帯に起きる地震は被害が大きくなる傾向もあったが、人的被害はけが人十数人だった。

 震源地は南海トラフの想定震源域内の日向灘で、マグニチュード(M)は6・6。京都大防災研究所宮崎観測所の山下裕亮助教(観測地震学)によると、日向灘でM6・6を超えるプレート内地震は1987年以来という。

 ただ、深さ45キロのフィリピン海プレートの内部で起きたもので、プレートの境界で起こるとされる巨大地震とは異なる。専門家は「南海トラフとの関連性は低い」との見方で一致する。巨大地震の可能性を判断する気象庁の「評価検討会」は、M6・8以上が発生したときに臨時で開催されるため、見送られた。エネルギー量で見ても今回の地震はM6・8の半分だ。

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 南海トラフ地震は、フィリピン海プレートの沈み込みに耐えられなくなったユーラシアプレートが跳ね上がって起こるとされる。気象庁は「必ずしも一度とは限らない。あらゆるケースが考えられる」と語る。

 具体的には、東西どちらかの半分だけが動く「半割れ」や、前震と位置付けられる局所的な「一部割れ」などが考えられる。1854年の地震は東西で約32時間、1944年と46年には約2年の時間差で大きな揺れがあった。

 時間差で迫る巨大地震に備えるのが臨時情報だ。M6・8以上の地震や、プレート境界で大きな揺れを伴わない「ゆっくり滑り」があると、発生から5~30分後に気象庁が「臨時情報(調査中)」を出し、テレビやラジオは緊急放送やテロップで知らせる。検討会は震源や規模から危険性を評価し、2時間後には「警戒」や「注意」を発表。これに基づき、自治体などは、津波からの避難が間に合わない地域に事前避難を呼び掛けるなど、何らかの防災対応を求める。

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 2019年5月に運用が始まった臨時情報が出されたことはない。発表されると大混乱も予想されるため「準備をしておかないと、臨時情報が出た後では間に合わない」。名古屋大減災連携研究センターの福和伸夫教授(地震工学)は指摘する。

 臨時情報に関連して内閣府は14都県139市町村に対し、津波に備えて1週間の避難を求める「事前避難対象地域」の指定を求めている。9割近い121市町村(昨年4月時点)が指定を終えているものの、取り組みの実情や姿勢には差があるという。

 いまだに分からないことも多い巨大地震。想定される被害が甚大なだけに事前に何をすべきなのか改めて考えたい。福和教授は「気象庁は臨時情報で巨大地震のシグナルを分かりやすく伝える。住民が避難行動を想定し、備蓄の再点検などをしておくだけで救える命がある。今から始めてほしい」と強調する。

 南海トラフ巨大地震 駿河湾から日向灘沖にかけて、海底に延びる溝状の地形(トラフ)に沿って起きる地震。政府の地震調査委員会は、マグニチュード(M)8~9級の巨大地震が30年以内に70~80%、40年以内に90%程度の確率で起きると算定する(1月1日時点)。2012年に内閣府が発表した被害想定では、死者は最大32万3000人、全壊する建物は最大238万6000棟。予想される津波の高さは、宮崎県17メートル▽大分県15メートル▽鹿児島県13メートル-など。九州の死者数は宮崎、大分両県を中心に最大6万人とされる。

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