会社経費や顧客情報まで…全特の異様な政治流用 日本郵便、内部調査打ち切り

 日本郵便は1日、顧客の個人情報を政治活動に流用したとして、郵便局長ら112人を社内処分したと発表し、カレンダーの政治流用に端を発した一連の問題の内部調査を打ち切った。調査は、小規模局の局長でつくる任意団体「全国郵便局長会」(全特)の政治活動と会社の業務が混然一体となっている構造的な要因には踏み込まず、問題を矮小(わいしょう)化するような内容に終始した。顧客の信頼回復よりも、政権与党と太いパイプがある全特との関係維持を優先する経営陣のゆがんだ意識が垣間見える。

 一連の問題は、昨年10月の西日本新聞の報道で発覚。全特は同社に要望して2018~20年度に約8億円分のカレンダー購入経費を負担させた上で、全国の局長に全特が擁立する自民党参院議員の後援会員らに配布するよう指示した。

 同社はカレンダー問題について「支援者も広い意味でのお客さま」と言い張り、政治流用を認めなかった。統括局長を大量処分した理由は「会社として政治活動をしているかのような誤解を生じさせる指示をした」というものだ。

 顧客情報流用問題では、調査に当たったコンプライアンス担当社員が不正を申告した局長らに回答を撤回するよう促し、上層部から指示があったかどうかは質問項目にも入れなかった。

 詭弁(きべん)にも聞こえる理屈を繰り返し、甘い調査で幕引きを図るのは、全特に配慮しているからだろう。

 全特は過去3度の参院選で比例代表に自民党から組織内候補を立て、いずれも党内トップで当選させた。集票力の源泉は局長に関する特殊な人事の仕組みだ。

 局長の採用に当たっては、全特の地区役員らが「夫婦で選挙活動に取り組めるか」などを見極めて事前に人選し、会社側はそれを追認する。社内の役職も局長会の序列通りに決まることがほとんどだ。会社の要職にも就いている全特幹部は、配下の局長に「1人30票」といった厳しいノルマを課し、消極的な局長を叱責(しっせき)する。

 政治活動の自由は保障されるべきだ。だが任意団体にすぎない全特が会社の人事権を事実上掌握し、会社経費や顧客情報まで流用して政治活動に奔走する現状は異様だ。

 同社が公表した再発防止策は「研修の実施」「個人情報の適正な取り扱い」など表面的なものばかり。保険の不正販売問題からの信頼回復を目指して打ち出した「すべてを、お客さまのために」というキャッチコピーがむなしく聞こえる。

 親会社・日本郵政の増田寛也社長は昨年10月の会見で「近代的な会社形態としては不十分」として、局長の人事体制を見直すと明言している。全特との関係を抜本的に変え、業務と政治活動を明確に線引きしなければ、同じような問題が繰り返されかねない。

■郵便局長ら112人処分

 顧客情報流用問題の処分者の内訳は、情報を流用した局長104人と不適切な指示をした統括局長6人が注意の懲戒処分、常務執行役員2人は監督責任を問い報酬減額。

 流用されたのは顧客1318人分の氏名や住所、電話番号で、参院議員らの支援活動に使われた。カレンダー問題を含む処分者は計209人になった。

 (宮崎拓朗)

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