盛り土規制法案 「熱海」の悲劇繰り返すな

 水害を代表例として各種の災害が大規模化している。地球温暖化の影響も指摘され、豪雨や水害は今後も激しさを増すと覚悟すべきだろう。関連する法制度の整備を急がねばならない。

 その一つに、斜面などに土を盛って平らに造成した「盛り土」の災害対策がある。規制を強化する宅地造成等規制法の改正案が衆院で審議入りした。政府は今国会で成立させ、来年夏の施行を目指している。

 きっかけは昨年7月に静岡県熱海市で発生した土石流災害だ。住宅街を切り裂くような流水や土砂の生々しい映像を思い起こす人も多いのではないか。災害関連死を含む27人が死亡し、1人が行方不明のままだ。

 土石流現場の最上部に造成された盛り土の高さは、業者が市に届け出た計画の3倍超に及んでいたという。県と市は現場一帯の危険性を認識していながら、それぞれが所管する法令内での対応を優先した結果、取り返しの付かない災害につながった。

 この教訓から、全国の自治体職員が主に目視で盛り土を総点検した。その結果、全体の約3万6千カ所のうち1089カ所で不備が確認され、うち半数に当たる516カ所で必要な災害防止策が講じられていなかった。無許可造成や届け出内容と異なる状況も目立った。

 熱海の土石流は決して「特異なケース」と言い切れない実態が浮き彫りになった。

 盛り土をする場合、現状では土地の用途や場所によって森林法や農地法、自治体の条例などで規制される。ただ、その根拠や規制内容は大きく異なる。制限の緩い場所を探して業者が建設残土を処理している、といった例も指摘されている。

 改正法案は土地の用途にかかわらず一律で規制し、法律名も「盛り土規制法」に改める。都道府県や政令指定都市は、盛り土により人家などに被害が及ぶ恐れがあるエリアを規制区域に指定する。盛り土を許可制にし、安全基準に適合しているか検査する。

 罰則も強化する。無許可造成のほか、危険な盛り土に対する是正措置命令に違反した場合などが対象だ。個人は「3年以下の懲役または1千万円以下の罰金」とする一方、法人の場合は罰金3億円以下とかなり踏み込んでいる。

 肝心なのは、法改正が実際に危険な盛り土が増えることを防ぐ力になるかだ。熱海の土石流の悲劇が導いた法改正の狙いを、関係業界や盛り土周辺に住む人々に周知徹底することから始めたい。

 災害関連の法律は既に、災害対策基本法を柱に100本を超えている。

 防災や人命救助では根拠法令の分かりやすさが明暗を分ける場合もある。一刻を争う事態に即応できるように適切な見直しや統合を進めたい。今回の改正効果も事後の検証が欠かせない。

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