PTAへ個人情報提供は当然か? トラブルの例も 北九州市は「原則禁止」に

「変わるPTA」(上)

 保護者全員が加入し、役割分担してきたPTAの運営方法が大きく変わろうとしている。きっかけの一つが、保護者や児童生徒の個人情報の取り扱いを巡るトラブル。北九州市はリスクを避けるために昨年12月、学校からPTAへの個人情報の提供を「原則禁止」とする通知を出した。PTAが適切に情報を管理し、どう参加しやすい活動に見直していくのか。2回に分けて報告する。

 昨年まで娘が大分市立小に通ったレイコさん(40代)=仮名=は数年前、PTA活動の一環で夏休みのプール監視を担当した。同じ日、赤ちゃんを抱えて参加した母親がいた。強い日差しの下、顔が真っ赤になった親子が気の毒になり、溺れた児童をすぐに救助できない危険性も感じた。

 ただ、幼子がいてもPTA活動を回避するのは容易ではなかった。慣例で全ての保護者が加入し、「一人一役」を担うことになっていた。通学路の見守りやベルマークの回収などの役割もあり、希望する担当になれるわけでもなかった。

 「なぜ、ここまでしなければならないのか」。レイコさんによると、精神的に疲弊して通院する人や、「みんなに役員ができない理由を説明し、謝罪して」と言われた人もいた。

 そもそも入会届を出していないのにPTAに加入したことになっていた。保護者間で相談して退会することにした。学校が2年前に配った児童名簿作成への同意書で、PTAに氏名や住所、電話番号を提供するかどうかの項目で「同意しない」に丸をして提出した。

 その後、校長と話す中で自身と娘の情報がPTAに伝わっていると感じ、昨年1月に地方公務員法(守秘義務)違反の疑いで、校長を刑事告発。不起訴処分となり、3月に検察審査会に審査を申し立てた。

 市教育委員会の代理人弁護士は「住所や電話番号は伝えておらず、提供したのはPTAに入会しない保護者の子の学年と組と名前だった」と話す。

 こうしたトラブルを受け、北九州市教委は昨年12月、市立小中と特別支援学校の校長に「学校が保有する個人情報は、PTAに提供しないことを原則とする」との通知を出した。「学校が提供しなくても、PTAは保護者に直接、個人情報の提供を依頼できるので問題はない」と説明する。

 改正個人情報保護法が2017年に施行され、個人情報の適正な管理がPTAに課されたことも背景にある。市教委の担当者は「学校が保護者に確認を取り、PTAに提供する過程でミスが起きる場合もある。安心して参加できるPTA活動につながれば」と話す。

 レイコさんは九州の自治体を中心に、学校が保護者に配った個人情報を取り扱う際の同意文書を開示請求した。PTAと学校の活動を一緒にして同意を求めたり、「了承いただけない場合は担任まで連絡を」と記したプリントを配って済ませたりした学校もあった。

 学校での個人情報の収集に関する教育委員会の指針も開示請求したが「文書不存在」が目立った。レイコさんは「PTAを壊そうと思っているのではない。個人情報を適正に管理してほしいだけ」と訴える。

 加入するのも、活動への参加も任意であるはずのPTA。一方で、通学路の見守りや学校図書の修繕を担う保護者の存在は、欠かせないものになっている。多くの保護者がやりがいを感じ、参加しやすい活動にするには、どうすればいいのだろうか-。

 次回は、運営方法の改革を進めるPTAを取り上げる。 (編集委員・四宮淳平)

■保護者にも分かりやすく

 PTA問題に詳しい文化学園大の加藤薫教授(日本文化論)の話 PTAを巡っては、強制加入や過重な負担、不透明な会費の徴収など、さまざまな問題が取り沙汰されてきた。こうした問題の解決につなげるためにも、学校からPTAへの個人情報の提供はやめるべきではないか。同意が得られた保護者や児童生徒の情報だけをPTAに提供することも可能だが、多忙な教員が同意者を抽出しなければならず、情報の取り扱いを巡りトラブルが起きる危険性も残る。「原則禁止」にした方が学校にも保護者にも分かりやすいだろう。

 PTA Parent(保護者)、Teacher(先生)、Association(組織)の略。戦後、日本の民主化を進めるため、連合国軍総司令部(GHQ)が文部省(当時)に指示し、全国で急速に設置が進んだ。学校設備の充実や給食制度の定着、地域の環境改善に貢献してきた歴史がある。

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