産科医療補償「不合理」基準撤廃も…脳性まひ児、漏れた救済 「審査済み」見直さず

 出産事故で重度の「脳性まひ」となった場合、医療機関の過失にかかわらず一定額が補償される国の産科医療補償制度の基準と審査が、今年から大幅に緩和された。専門家でつくる運営委員会から「医学的に不合理な点がある」などと指摘されたのを受け、厚生労働省が改定。分娩(ぶんべん)時に低酸素状況だったかどうかを確認する「個別審査」を撤廃した。ただ過去に対象外とされたケースへの対処はなく、救済措置を求める声が上がる。 (水山真人)

 脳性まひは妊娠から新生児期の間に胎盤からの出血や早産が原因で、十分に酸素が送り込まれず、脳が損傷することで起きる。手足がこわばって硬くなる特徴があるほか、姿勢を保ったり、体を動かしたりするのが困難になるなどさまざまな症状がある。

 原因を巡って訴訟に至ることも多かった。産科医不足の要因でもある訴訟リスクの回避や家族の負担軽減を目的に、医療機関の過失が認められなくても給付する「無過失補償」の制度が2009年にスタート。創設段階ではデータが限られ、補償範囲や水準は「適宜必要な見直しを行う」(制度運営組織準備委員会報告書)とされた。先天性の場合は補償されない。

 「妊娠週数」と「出生体重」を重視した当初の基準では、「33週、2千グラム以上」に適合すれば、簡便な一般審査で補償対象かどうかを判断。適合しなくても個別審査で低酸素状況を証明すれば対象となった。基準は6年後に「32週、1400グラム」に緩和された。

 ところが20年11月の検討会で、個別審査で対象外とされた414件のうち99%が、陣痛前の破水や帝王切開など切迫した分娩だったことが判明。低酸素状況だった可能性が高くても、それを証明できないケースが多数あることが分かり、見直しにつながった。今年生まれた子どもから「28週以上」であれば一般審査のみで判断している。

 「産科医療補償制度を考える親の会」代表の中西美穂さん(41)は「医学的な合理性がない基準で、対象外とされたままでは納得できない」と補償を求める。制度を運営する公益財団法人・日本医療機能評価機構(東京)は「(見直しは)医療の進歩がもたらした結果。当時の審査は正しかった」との立場。厚労省は「現状では、基準をさかのぼって適用するのはなかなか難しい」としている。

 産科医療補償制度 脳性まひの診断には3年程度要することが多く、5歳の誕生日まで申請が可能。一時金600万円に加え、19歳になるまで毎年120万円が給付される。公的医療保険で妊婦に支給される出産育児一時金を元手とし、各医療機関が1分娩ごとに納める掛け金(2・2万~3万円)から支払われる。補償対象となった場合は原因分析が行われ、再発防止に役立てられる。

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