「子育てしやすい街」なぜ教育予算少ないの? 【連載】北九州市のおカネ事情⑤

 「北九州市は『子育てしやすい街日本一』を標榜(ひょうぼう)しながら、なぜ教育予算は少ないのか」。八幡西区の40代の教職員男性から、西日本新聞「あなたの特命取材班(あな特)」に疑問の声が寄せられた。

 調べてみると、同市の教育予算はここ数年700億円規模で推移し、予算全体の1割程度。児童・生徒1人当たりに換算すると、2021年度は72万9千円だった。同じ政令市の福岡市は1人当たり77万4千円と、確かに4万円以上の開きがある。

 福岡市教育委員会によると、児童生徒が増え続ける同市では、教室拡張などの学校整備費と増員した教職員の人件費で予算が膨らんでいるため、1人当たりの額も増えているという。

 一方の北九州市。福岡市とは逆に児童生徒数は減少傾向が続いているが、学校整備費が年々膨らんでいる。市独自の試算によると、2032年にピークを迎える。

 1963年の五市合併で誕生した北九州市では、第2次ベビーブーム(71~74年)もあって、70年代前半に学校整備が集中。81年以前に建てられた校舎や体育館が7割に上るという。それらが一斉に更新時期を迎えているからだ。

 今後40年間の学校整備費は年間平均約144億円で、直近5年間の平均約78億円のおよそ2倍-。市は2018年、こうした危機的状況を試算した上で「学校施設長寿命化計画」を策定。年間約80~90億円が必要だと見積もったが、18~20年度に確保できた予算は約54~76億円にとどまる。

 市担当者は「計画通りに取りかかりたいところだが、税収が少なく予算が取れない。問題意識は持っている」としており、23年度に今後の学校整備費を改めて試算し、計画を見直すという。

 学校整備すら計画通りに進んでいないため、それ以外の費用を抑えざるを得ないのが教育予算の実態だ。ちなみに、学校の整備については、小倉北区に住む40代の会社員男性からも「あな特」に不満の声が寄せられた。

 男性によると、昨年度、中学の生徒会長だった娘が学校の設備に関して要望を学校側に伝えても、予算がないことを理由にまったく実現しなかった。男性は「各学校への予算はどのような基準で割り振られているのか知りたい」という。

 市教委によると、学校整備費のうち、約98%が大規模改修に使われている。「階段にスロープを付ける」「壊れたドアを直す」などの修繕予算は残りの2%でやりくりしており、学校の規模ではなく緊急度で判断している。要望をかなえるのは簡単ではないようだ。

安い給食費、仕入れ一元化で費用抑制

 北九州市の給食費は安いことで知られている。

 北九州市教育委員会は2020年、6年ぶりに給食費を値上げしたが、それでも1食当たりの費用は20政令市の中で4番目に安い(21年)=グラフ。月額で小学生が4300円、中学生は5400円だ。食材の仕入れを一元化するなどして費用を抑えているという。

 値上げ前は、牛肉を鶏肉で代用したり、デザートを減らしたりしていたが、栄養価の維持が難しくなるなどの問題が起きていた。戸畑区のある保護者は「給食費は安ければ助かるが、子どもはあまりおいしくないと言っていたし、栄養が取れないのは困る」と指摘する。

 コロナ禍で無償化に踏み切った政令市もある。大阪市は20年度以降、子育て世帯の支援を目的に、時限的措置として公立学校の給食費を一律で無償化。22年度も継続している。また、千葉市は22年1月から第3子以降の給食費を無償にしている。

 少子化が進む人口規模が少ない町村では以前から、転入促進を目的に給食費の無償化が進んでいたが、20年に兵庫県明石市(人口約29万人)が中核市で初めて無償化に乗り出し、注目を集めた。

 北九州市で将来、給食費の無償化はあるのか。市教委の担当者は「教育予算のなかで優先すべき他の事業もあり、現段階で給食費無償化は検討していない」としている。 =おわり

 (この連載は岩谷瞬、白波宏野が担当しました)

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