IR計画審査へ 長崎、大阪ともに疑問だ

 国は本当にこのまま突き進むのか。観光立国の切り札としているが、二つの計画には首をかしげたくなる点があまりに多い。

 日本初のカジノや国際会議場を備えた統合型リゾート施設(IR)について、国土交通省は長崎県と大阪府・市が申請した区域整備計画を受理した。有識者委員会による審査を経て、認定するかどうかを決める。

 予想された誘致合戦の熱気はない。それは申請が2カ所にとどまった結果に、端的に表れている。最大3カ所を認定する方針を示していた国にとっては誤算だろう。

 検討していた地域は他にもあった。和歌山県は申請直前で県議会の承認が得られなかった。横浜市は新市長が誘致を撤回し、東京都、北海道、名古屋市なども見送った。

 誘致に二の足を踏んだ最大要因は新型コロナ禍の長期化だ。主要客である海外からの観光客が急激に減り、カジノや国際会議はオンラインの活用が定着した。大規模施設を造り、国内外から集客する事業の前提は崩れつつある。

 にもかかわらず、国はホテルや国際会議場を大規模化する条件を付け、それに従い二つの整備計画は作成された。時世に合った事業なのか、疑問を持つ人も多いだろう。

 カジノに対する拒否反応はもとより根強い。2カ所とも入場制限などのギャンブル依存症対策を示してはいるが、不安は払拭できていない。

 まさに逆風と言える環境下で、長崎県は整備計画を申請した。佐世保市のハウステンボスの隣接地で2027年秋ごろの開業を目指す。「カジノ・オーストリア・インターナショナル・ジャパン」が中心となって事業を進める。

 年間経済効果が県内だけで3千億円を超え、関係自治体へ400億円近い納付金が見込めるという。地元では行政だけでなく、経済界にも期待感がある。長崎県議会と佐世保市議会は圧倒的な賛成多数で計画を承認した。

 議決の過程で気がかりなのは、事業に必要な4383億円の調達先が明確にならなかった点だ。約6割は国内外の金融機関から借り入れ、残りは出資を募る計画ながら、県は企業名を公表しなかった。

 企業から融資や出資の意思を示す書面を受け取ったという説明だけでは、多くの県民の理解は得られまい。金融機関や企業名を明示した大阪府・市とは対照的である。

 IRは民間事業ではあるものの、手続き段階から公的関与が大きい。地元自治体は交通アクセスの整備をはじめ、多額の公費で事業を後押しする。地域に及ぼす影響の大きさを考えれば、透明性の高い計画であるべきだ。

 コロナ禍前のように、国内外の人たちが不安なく旅行できる日常に戻るのが理想だ。それに近づく見通しが立たないと、IRを計画通りに推進すること自体がギャンブルになる恐れすらあるだろう。

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