ツイッター買収 自由と公共性の両立図れ

 「言論の自由」はもちろん大事だが、無条件に認められるものではない。誹謗(ひぼう)中傷を助長する投稿や事実に反する偽情報がインターネット上で野放しにならないように一定の規制は必要だ。

 短文投稿サイトのツイッターを買収する米実業家のイーロン・マスク氏は、このことを肝に銘じてほしい。

 ツイッターは全世界で1日当たり2億人以上が利用している交流サイト(SNS)である。マスク氏は約440億ドル(約5兆7千億円)でツイッターの全株式を年内に買い取り、非公開化するという。

 マスク氏は米電気自動車の大手テスラの最高経営責任者(CEO)で、テスラ株の上昇により世界一の大富豪に上り詰めた。今回の買収を事業拡大や資産運用の一つと見過ごすわけにはいかない。

 気になるのは、マスク氏が買収表明の直前に「言論の自由の原則の欠如は民主主義を根本的に損なう」と投稿し、現在のツイッターの運営を批判していたことだ。

 マスク氏は「言論の自由の絶対主義者」を自称し、サイト運営者による投稿の管理やアカウントの凍結、停止は極力避けるべきだと持論を展開してきた。

 ツイッター買収後は自身が暫定のCEOに就き、言論の自由の確保を名目に、投稿などに関する規制の緩和を目指すとみられる。

 問題は、マスク氏が強調する「言論の自由」の中身だろう。偽情報や人権侵害への批判を受けた大手SNSの規制についても「検閲」と否定的に捉えていたからだ。

 事実でないことも含め何を言うのも自由というのでは、社会の安定は保てない。それを世界に知らしめたのが2021年に起きたトランプ前米大統領の支持者らによる米連邦議会議事堂襲撃事件だ。

 トランプ氏は20年の大統領選で不正があったと、事実無根の投稿を続けた。こうした投稿が襲撃事件を招いたとしてツイッターはトランプ氏のアカウントを永久凍結した。マスク氏はこれに反発し、凍結を解除する意向を示す。

 確かに一営利企業が一国のリーダーの情報発信を妨げることの是非は大いに議論されるべきかもしれない。それでも、無責任な情報で社会が混乱に陥る事態は避けなければならない。

 SNSは今や社会のインフラである。その力は政治や経済を動かすほど大きい。ロシアのウクライナ侵攻でSNSによる情報戦が戦況に影響を与えていることからも、その公共性や重要性は明らかだ。

 SNSを巡っては、日本でもプロレスラーの女性が匿名の批判を大量に受けて自殺に追い込まれたり、東名高速道路であおり運転を受けた夫婦が死亡した事故でデマが流れたりするなど、多くの社会問題が発生している。

 SNSが真に社会に役立つツールとなるため、マスク氏には慎重な対応を求めたい。

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