「母乳バンク」のドナーになって感じた申し訳なさとうれしさ

 早産などで小さく生まれ、母親の母乳を十分に与えられない赤ちゃんに、寄付された母乳(ドナーミルク)を提供する「母乳バンク」。国内では2014年に取り組みが始まり、今春には東京に2カ所目となる拠点が整備された。今後の課題は周知とドナー(提供者)の確保だ。昨夏に第2子を出産した記者もドナーに登録。半年近く、母乳を提供してきた。体験を紹介する。(新西ましほ)

 午後11時。子どもたちが眠る寝室をそっと抜け出しリビングへ。電動の搾乳機を取り出し、乳房を清浄綿で拭く。繊維やごみが混ざらないよう注意しながら約30分かけて搾乳する。たまった母乳は専用の袋に移し、シールに日付と量を記入して貼り、冷凍庫へ。搾乳機を洗って消毒液に付ける。作業はこれで終了だ。

 昨年10月、産後3カ月が過ぎ、2人の育児にも慣れた頃、「日本母乳バンク協会」の公式サイトからドナー登録を申し込んだ。条件は(1)自分の子どもが必要とする以上に母乳が出る(2)過去に輸血や臓器移植を受けていない(3)過去3年に白血病など悪性腫瘍の治療歴がない-など。私は出産直後こそ粉ミルクと母乳の混合だったが、その後は幸い、十分な量の母乳が出た。

 申請後、指定の医療機関で問診と血液検査を受診。結果に問題はなく、11月末に登録が完了した。受診料はバンク側が負担。搾乳機や母乳保存用の袋など器材も提供される。母乳を送る宅配便も着払いで、ドナー側の費用負担はない。

 さっそく搾乳に取りかかる。まずは自分の子どもが優先。そのため私の場合、授乳間隔が空く夜間が中心となった。量は30ミリリットルの日もあれば100ミリリットルの日もあり、体調や寒暖などで大きく変化した。風邪をひいたり、心身の疲れがたまったりして母乳量が減り、搾乳できない期間もあった。

 冷凍した母乳は1リットルほどたまるとクール便でバンクへ送る。その際、体調やカフェインの摂取量(コーヒーを1日何杯飲んだかなど)、服薬状況などを用紙に記入して同封する。

 バンクに届いた母乳は一度解凍して細菌検査した後、低温殺菌処理されて再冷凍。依頼があった各地の医療機関へ送られるという。

 私が4月までに送った母乳は計約2・5リットル。想定していたより少なく、申し訳ない…。協会からは毎回、手書きの感謝状が届いた。育児休業で仕事を離れ、社会から隔絶されたような感覚に陥る中、「誰かの役に立てているのかもしれない」と思うとうれしかった。

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