サンマが導いた民主主義

 1960年代、米軍統治下の沖縄で「サンマ裁判」と呼ばれた訴訟があった。今では沖縄でも覚えている人が少ないエピソードだが、これが実に痛快な話なのだ。

 この訴訟は那覇市で魚仲買業を営んでいた女性、玉城(たましろ)ウシさん(1899~1980)が「サンマに課税しているのは不当。課税した分を返せ」と起こした。相手は米軍統治下に置かれていた行政組織の琉球政府。しかし実質的には「米軍の好き勝手な支配」への異議申し立てだった。

 その頃、沖縄では一部の魚介類を日本から輸入して販売していた。輸入に伴う課税の対象は、沖縄の支配者である米国人の高等弁務官による布令で決められていたのだが、対象の魚を列記した布令に「サンマ」はない。なのに課税されているのはおかしい、とウシさんは主張したのだ。

 琉球政府と米国側は強引な理屈で正当化を試みたが、判決はウシさんの勝利。しかし別の業者が同じ趣旨で訴訟を起こすと、形勢不利と見た米国側は管轄を沖縄から米国の裁判所に移してしまう。

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