コロナで世を去った北九州ゆかりのマエストロ 長野力哉さん追悼公演 22日、北九州芸術劇場

 昨年4月、一人のマエストロが新型コロナウイルスに感染し亡くなった。北九州市と縁が深く、市民オーケストラ「北九州交響楽団」(北九響)では客演指揮者として最多の計19回登壇。年末恒例の演奏会にも毎年招かれ、北九州のクラシック音楽界を彩った。22日、ともに舞台に立った地元奏者らが追悼の意を込めたコンサートを北九州芸術劇場(小倉北区)で開く。

 長野力哉さん(享年60)=東京都出身=は、指揮者の尾高忠明さんや小澤征爾さんらに師事。ベルリン芸術大やカラヤンが指揮するベルリン・フィルハーモニー管弦楽団で研さんを積み、帰国後は国内のオーケストラを指揮した。

 北九響で初めて指揮棒を振るったのは1990年、長野さんが29歳の頃だった。当時の楽団メンバーらがその才能にほれ込み、たびたび共演を依頼。公演後は杯を交わし親睦を深めた。最初に出演した時から北九響に在籍する大庭三紀さん(64)は「29歳でこんなに深い音楽ができるのかと衝撃だった。酒の席では愉快で、人としても魅力的な方だった」と振り返る。

 2021年秋、北九響の定期演奏会で20回目となる指揮を予定していた。だが同年3月にコロナに感染。一時は回復に向かったが、3月末に容体が急変したという。「人工呼吸器になります」。長野さんから通信アプリ「LINE」でメッセージを受けた大庭さんは「何かの誤送信かな」とクエスチョンマークを返したが、以降「既読」マークが付くことはなかった。4月13日に肺炎で亡くなった。

 もう一つ、長野さんが北九州で尽力した演奏会がある。年末恒例の「レクイエムin北九州」。東日本大震災を経た15年、不本意に亡くなった人を追悼しようと始まった。地元のプロ管弦楽奏者と公募で選ばれた合唱団がモーツァルトのレクイエムを奏でる。指揮は、コロナ禍以前の19年まで全5回とも長野さんが執った。

 長野さんへ追悼と感謝の意を込めてレクイエムを奏でよう-。長年共演してきた地元音楽家らの思いで、今年は年末ではなく、長野さんの命日に近い5月に開催することに。北九響はレクイエムの演奏前に、長野さんが敬愛したブルックナーの交響曲を奏でることにした。

 追悼演奏の指揮者は、長野さんと桐朋学園大で同期だった山下一史さん(60)。レクイエムの合唱団は、長野さんと共演経験のある合唱者のみで組織するなど生前つながりのあった総勢約160人で大曲に挑む。

 コロナ禍で3年ぶりの舞台を前にこの世を去った長野さん。14日、リハーサルに挑んだ山下さんは「これからだったのに、力哉の死は言葉にならないほど惜しい。多くの人に愛され尊敬された立派な指揮者だった」と悔やむ。大庭さんは「北九州の音楽界に大きな貢献をしていただいた。敬意を込めて演奏したい」と話している。

 午後2時開場、同3時開演。一般2500円、学生千円(当日はいずれも500円増)。問い合わせはレクイエム事務局=093(533)1313。(白波宏野)

関連記事

福岡県の天気予報

PR

PR