部活の地域移行 まずは受け皿を整えたい

 公立中学校の運動部活動を民間の団体などに委ねる「地域移行」の議論が、スポーツ庁の有識者会議で大詰めを迎えている。現状は教員が指導を担っており、実現すれば教育現場の大きな変革となる。

 有識者会議は「休日の部活指導の地域移行を2023年度から3年間で達成する」との目標を盛り込んだ提言案を示している。今月中に提言をとりまとめる予定だ。この3年を「改革集中期間」と位置づけ、休日の地域移行を達成した後、平日でも進めることが想定されている。

 少子化で運動部の部員が集まらず、大会への参加や日々の練習もままならない地域がある。教員の多忙も深刻で、休日の大会引率も含めた部活動の指導が大きな負担となっている。自身が経験のない競技の顧問となり、困惑する教員も少なくない。

 青少年がスポーツに親しむ機会を確保することは大切なことだ。ただ、その役割の中核を学校の部活動が担うことには、もはや無理があると言わざるを得まい。スポーツの受け皿を地域に広げる方向性は妥当と言えよう。

 実現には課題も山積している。地域移行では、幅広い世代が参加する総合型地域スポーツクラブや民間のフィットネスジム、大学など多様な団体の参画が想定されるが、スポーツ団体の数は地域で異なる。地域格差をどう解消するのか。看過できない問題だ。

 住民が運営を主導する総合型地域スポーツクラブの設置推進、民間事業者や企業、大学などの参画を財政措置も含め後押しする必要があろう。

 指導者の確保も重要だ。指導歴が長い教員OBだけでなく、競技に熟達した大学生、リタイア者を含めたスポーツ選手などが対象になろう。

 こうした人材に対し、安全を優先しつつ、過剰な練習や体罰、暴言といったハラスメントが起きないよう、十分な研修を実施すべきだ。部活動は教育の一環であり、細部にわたる配慮を求めたい。

 地域によっては民間事業者の参画も想定され、現在の部活動の部費よりも高い費用がかかる懸念がある。有識者会議は学校や公共施設の低額利用による会費の抑制や困窮する家庭への支援を提言している。経済的理由で運動から離れる生徒が出ないよう、手厚い対策が欠かせない。

 今回の提言案は、トーナメント方式で1位を決める現行の各種大会の在り方も問題視している。運動部活動の多くは勝利、記録向上を目指す指導が基本とされる。確かに競技志向の生徒もいる。だが、スポーツを楽しむこと自体を重視する生徒も多い。検討に値する提言ではないか。

 文化庁の有識者会議では、吹奏楽や合唱といった文化系部活動の地域移行を議論している。戦後、連綿と続いてきた学校の部活動全体が転換点を迎えている。民間の力に頼る改革だけに、国民的議論を広げることも肝要だ。

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