中国ゼロコロナ 行き過ぎた政策を見直せ

 感染症対策は行動制限を伴う。それが過度になれば人権を侵し、経済を停滞させ、社会に深刻なひずみを生む。中国の習近平指導部はそれを肝に銘じるべきだ。

 中国は新型コロナウイルスの感染を抑え込むため、私権を極端に制限して防疫を徹底する「ゼロコロナ政策」を続けている。各地でロックダウン(都市封鎖)や厳しい移動制限を実施してきた。

 上海では3月下旬から都市封鎖が続く。市当局が強制的に民家を消毒し、住民を隔離施設に送り込むという。現地の学者が実例を挙げ「違法行為」と告発した。家の外に一歩も出られない生活が長期化し、疲弊した住民から制限緩和を求める声が相次ぐのも当然だろう。

 世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は、この政策がもたらす社会活動の沈滞や人権の制限を踏まえて「持続可能とは思えない」と批判した。異例の警告である。

 感染力の強いオミクロン株をはじめ、新型コロナは変異株が何度も出現しており、完全な封じ込めは難しい。一方でワクチン開発が進み、治療法も確立してきた。そうした現状を背景に、政策の変更を促す発言である。

 ところが中国は全く聞く耳を持たないようだ。習指導部は今月に入り「わが国の防疫方針を疑い、否定する言動と断固として闘う」との方針を表明し、テドロス氏の警告にも「無責任な発言」と反発している。

 習指導部は感染対策が難航した欧米を横目に「コロナ対策で最も成功した国」と自画自賛し、共産党による一党支配の優位性を宣伝している。

 中国が感染者の増加を抑えてきたことは確かだろう。ゼロコロナ政策は国民から一定の支持を得て、習指導部の求心力を高めてきた。

 感染拡大に神経をとがらせるのは理解できるとしても、国の方針に異議を唱えれば力ずくで抑え込む姿勢は明らかに行き過ぎである。

 世界経済への影響も気がかりだ。厳格なコロナ政策による中国経済の減速は国外に波及している。

 中国の1~3月期の国内総生産(GDP)は前年同期比4・8%増で、政府が定めた今年の目標成長率「5・5%前後」を下回った。

 国際通貨基金(IMF)は先月、世界経済の成長見通しを下方修正する際、ロシアのウクライナ侵攻とともに中国経済を要因に挙げた。

 その中核である上海の都市封鎖は6月に解除される見通しになったとはいえ、この間の機能不全は深刻だ。他地域でも工場の操業停止で生産活動が滞り、日本の自動車産業などに支障が出ている。

 中国は秋の共産党大会を控え、ゼロコロナ政策を堅持するとみられる。感染症対策には柔軟性が肝要だ。習指導部には世界2位の経済大国の責任を果たし、硬直した政策の転換を図ってもらいたい。

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