有事の地下避難施設、佐賀県だけゼロ 原発や自衛隊駐屯地あるのに…

 ロシアによるウクライナ侵攻で、他国から攻撃を受けた際に住民が身を守る地下避難施設への関心が高まっている。九州・沖縄8県では国民保護法に基づいて指定された「緊急一時避難施設」計8596カ所のうち、爆風などの直接被害を受けにくい地下施設は計55カ所にとどまる。原発や自衛隊駐屯地がある佐賀県では全国で唯一、地下施設の指定がない。日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、有事に備えた避難態勢づくりが求められる。

 緊急一時避難施設は、弾道ミサイル攻撃を受けた際の避難場所として、都道府県知事や政令市長が堅固な建築物や地下施設を指定。全国では5万1994カ所(2021年4月1日時点)が指定され、2%に当たる1278カ所が地下施設となっている。九州・沖縄では、緊急一時避難施設に占める地下施設の割合が1%にも満たない。

 安全保障に詳しい日本大危機管理学部の福田充教授によると、頑丈な建物内であれば衝撃が軽減されるが、威力が強いミサイルから身を守るには地下への避難が有効だという。

 地下施設の数を都道府県別にみると、東京都188カ所▽石川県176カ所▽長野県124カ所▽富山県105カ所▽愛知県100カ所-の順に多い。一方、佐賀県はゼロで、岩手、島根、徳島、鹿児島4県は各1カ所にとどまる。

 福岡県では、小学校体育館や公民館など緊急一時避難施設2427カ所のうち、福岡市の庁舎や市民センター、久留米市役所など22カ所で地下がある。このほか、福岡市地下鉄の33駅、天神地下街などが「大規模地下緊急一時避難施設」に指定されている。

 なぜ佐賀県は地下施設の指定がゼロなのか-。同県危機管理防災課は、地下がある公共施設や自治体管理の地下道が少ないことを理由に挙げる。県庁や市役所には地下があるものの「有事には対策本部の拠点となるので避難所にするのは難しい」という。地下駐車場などを持つ民間施設に交渉する予定だが、担当職員が少なく、該当施設の数は把握できていないという。

 佐賀県内には九州電力玄海原発(玄海町)や陸上自衛隊目達原駐屯地(吉野ケ里町)がある。ロシアのウクライナ侵攻では原発や軍事施設が標的にされており、玄海原発から半径30キロ圏内にある同県唐津市の主婦(70)は「いつ原発が攻撃されてもおかしくない。県と国はもっと真剣に考えてほしい」と訴える。

 在日米軍専用施設の約7割が集中する沖縄県でも地下施設は6カ所にとどまる。沖縄県の担当者は「民間の建物についてもヒアリングし、地下施設の指定を増やしていく」としている。

 緊急一時避難施設の指定を促す内閣官房の担当者は「地域事情もあるので問題視はしてないが、さすがに地下施設ゼロはどうかと思う」。今後、地下施設の指定が少ない自治体に対し、避難を受け入れる既存施設がないか洗い出すよう呼びかけるという。

 福田教授は「地下施設の必要性について十分に議論もできていないのが現状だ。北朝鮮によるミサイル攻撃などリスクはゼロではなく、他国の攻撃から国民を守る方法を具体的に話し合うことが必要だ」と指摘する。

 (野村有希)

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