福岡も平均以下、九州の最低賃金はなぜ低い 「千円以上」実現は遠く

 西日本新聞などによる「賃金アンケート」の結果でも、最低賃金の引き上げを望む声が相次いだ。岸田文雄政権は引き上げ目標を掲げているものの、九州での実現には時間がかかりそうだ。

 アンケートで居住地の最賃について聞くと、「安い」が89・4%に達した一方で「ちょうど良い」(9・4%)と「高い」(1・2%)はわずかだった。

 福岡県の最賃は870円だが、九州のほかの6県は822~821円にとどまる。福岡市の金融機関に勤務する女性(53)は「物価が上昇しているのに、賃金も上がらないと生活は厳しい」と訴えた。

 岸田政権が7日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2022」。最賃について「できるだけ早期に全国平均千円以上」を目指すとした。現在の全国平均は930円で、毎年30円ほど引き上がった(21年の改定額28円)として全国平均で2、3年は掛かる。当然、870~821円幅の九州はさらに時間を要する。

 最賃の引き上げについて経営側の見方はどうか。

 日本商工会議所が2月に実施したアンケートでは、最賃を「引き下げるべき」「現状維持」と回答した企業が39・9%で前年比16・7ポイント減。一方で「引き上げるべき」は13・6ポイント増の41・7%と「引き下げ」などを上回った。日商は「人手不足や物価上昇が強まっている結果だ」とし、賃上げには一定の理解を示している。

 最賃を巡っては、具体額について議論する中央、地方の最賃審議会が今月末から本格化する予定だ。ある労働局関係者は「骨太方針に沿って審議が進むだろう」としている。

 (竹次稔)

「ランク」固定、最賃改善の足かせ

 ▼熊本大・中内哲教授(労働法)

 西日本新聞など九州3紙の賃金アンケートで、約9割の回答者が現在の最低賃金(最賃)を低いと感じ、6割が時給「950円以上」を望んでいた。政府が「できるだけ早期に全国平均千円以上」という目標を掲げただけに、最賃の改善が今夏の参院選で争点の一つになる可能性がある。

 全国47都道府県をA(高)~D(低)の4区分とし、厚生労働省の審議会が各ランクの引き上げの「目安額」を示す現制度は、1978年度からスタート。九州では福岡がC、ほかの6県がDランクとする評価は一貫して変わっていない。

 この区分けは、給与や消費支出など19項目のデータに基づき総合指標を設定。東京都を100とし、A81以上、B76・5以上、C72・6以上と設定された2017年の見直しで、埼玉県A、山梨県Bなどへランクアップした。ちなみに福岡県は75・1で、熊本県が69(ワースト10位)、鹿児島県67・7(同6位)との評価だった。

 そもそもなぜ、九州などは最賃が低額なのか。それは、ランクを決める際に用いる給与などの水準が低い事情はあるが、低いデータを指標とすれば、ランクが固定されて最賃が改善されづらいという制度上の課題がある。賃金が上昇しない日本で、本来は全体的底上げがあるべきなのに、目安制度の運用が各ランク内の横並びを招き、賃金上昇の足かせとなってきたのは否定できない。

 最賃引き上げを考える際、特定最賃制度も見逃せない。労働組合と使用者との申し出に基づき、特定業種の従事者へ適用される最賃を定める仕組みで、一般的な地域別の最賃よりも高く設定される。例えば、福岡県の製鉄業など980円、熊本県の自動車製造業など902円、鹿児島県の自動車小売業872円などだ。

 21年3月時点で、特定最賃の適用者は約292万人。特定最賃が多くの分野に浸透すると、各地の賃金の引き上げにつながる。労組の推定組織率は同年16・9%と低いが、特定最賃を広げる取り組みは多くの賛同者を得るきっかけになるはずだ。

 なかうち・さとし 1969年広島県生まれ。北九州市立大と熊本大の助教授などを経て2010年9月から現職。専門は労働法。現在、熊本県労働委員会会長。

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